2015 Fiscal Year Annual Research Report
燃料生産を目指した微細藻由来直鎖炭化水素の生合成メカニズムの解明
Project/Area Number |
15H04547
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡田 茂 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (00224014)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松永 茂樹 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (60183951)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | バイオエネルギー / 炭化水素 |
Outline of Annual Research Achievements |
微細藻類には脂肪酸から生合成されると考えられる直鎖脂肪族炭化水素が、種間を越えて広く分布する。その含量は通常、藻体乾燥重量の1%以下であり、藻類系バイオ燃料として注目されている、トリグリセリド系の脂質に比べて低いため、その応用は検討されていない。一方、高等植物では、葉表面等のクチクラ層に含まれる炭化水素の生合成に関する知見が蓄積しつつある。そこで本研究では、微細藻類における直鎖脂肪族炭化水素の生合成に関与する酵素遺伝子の解明を目的とした。 高等植物のワックス生合成に関与している酵素である、CER1(脂肪鎖アルデヒド脱カルボニル化酵素)およびCER3(脂肪酸水酸化酵素)には、種間を越えて良く保存されたアミノ酸配列が存在する。そこで微細藻類における脂肪鎖アルカンおよびアルケンも同様の酵素により生成するのではないかという仮定の下、CER1および3ホモログの取得を微細藻類から試みた。緑藻Chlamydomonasおよび珪藻PhaeodactylumのゲノムおよびESTデータベースにつき、上記高等植物由来のCER1および3のアミノ酸配列を用いて検索をおこなったところ、部分的に相同性を示す候補配列はみられたものの、タンパク質コード領域全長を含んでいると考えられる物は得られなかった。また、微細緑藻Botryococcus brauniiのA品種およびB品種のESEデータベースについても、同様の相同性検索を行ったものの、候補遺伝子の取得には到らなかった。 一方、微細藻類の藻体ホモジネート中における、直鎖状炭化水素生合成酵素活性の検出を可能にするため、主としてB. brauniiを用い、放射性同位体を用いた酵素アッセイ法の検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
高等植物由来のCER1およびCER3のアミノ酸配列を用いてデータベース検索をおこなったところ、部分的に相同性を示す候補遺伝子配列はみられたものの、タンパク質コード領域全長を含んでいると考えられる塩基配列は得られなかった。また、微細緑藻Botryococcus brauniiのA品種、およびB品種のESEデータベースについても、同様の相同性検索を行ったものの、候補遺伝子の特定には到らなかった。さらに高等植物由来各種CERで保存されているアミノ酸配列を基にした、数組の縮重プライマーを用い、各種微細藻類由来のゲノムDNAあるいはcDNAを鋳型としてPCRによる当該遺伝子の増幅を試みたが、現在までにCERアナログと考えられる遺伝子の配列は得られていない。したがって真核微細緑藻における直鎖状炭化水素の生合成が、高等植物のワックス生合成とは必ずしも共通性を有していない可能性が考えられた。 一方、微細藻類の藻体ホモジネートにおける、直鎖状炭化水素生合成酵素活性検出法の開発を試みた。最初にB. brauniiのA品種について過去に報告例のある、オレイン酸およびオクタデカナールの直鎖状炭化水素への変換の検出を試みた。放射性同位体で標識した上記前駆体を、B. braunii A品種から調製したミクロソーム画分に加え、酵素反応生成物の放射能を検出することを試みたが、顕著な酵素活性は検出できなかった。これはB. brauniiは個々の単細胞が、炭化水素および細胞外マトリクスと呼ばれるバイオポリマーで覆われているため、効率的な細胞破砕が難しいという事情が挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
微細藻類が生産する直鎖状炭化水素の生合成は、高等植物のワックス生合成と共通性があると想定し、関連酵素遺伝子であるCER類のホモログを取得することを試みたが、次年度以降はCER類のみでは無く、ラン藻類あるいは細菌類におけるアルカン、アルケン生合成酵素遺伝子と相同性を示す遺伝子にも、探索範囲を広げて行く予定である。さらに候補遺伝子の取得については、生産する炭化水素が品種間で大きく異なる、B. brauniiのA品種とB品種のESTデータベース間において、大きく発現量の異なる遺伝子類を選択し、それらの機能同定を行っていく予定である。 また、各種微細藻の藻体ホモジネート中における、当該炭化水素生合成活性の検出法は、関連遺伝子の同定には必須の実験手法である。平成27年度は十分な活性を検出出来なかったことから、培地へ基質や合成阻害剤の添加を行って藻体を培養することにより、酵素活性のレベルが変化した藻体を作出して、引き続き酵素活性の検出に努める予定である。これについては膜酵素の活性を維持したまま、藻体ホモジネートを調製することが可能な細胞分画法を工夫する必要があると考えており、フレンチプレス法、ビーズ法等を試すとともに、扱いやすい藻株の検討も行っていく。
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