2016 Fiscal Year Annual Research Report
フグ毒テトロドトキシンの輸送・蓄積に関わる分子機構究明
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15H04551
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
荒川 修 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (40232037)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 明徳 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 准教授 (40378774)
高谷 智裕 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (90304972)
山口 健一 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 准教授 (90363473)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | テトロドトキシン / フグ毒結合性タンパク質 / PSTBP / トラフグ / ヒガンフグ / 次世代シーケンサ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、まず、トラフグTakifugu rubripesの各部位につき、テトロドトキシン(TTX)結合性タンパク質(PSTBP)アイソフォーム(Tr)群等、毒輸送関連遺伝子群の発現量を比較した。トラフグ試料より肝臓、卵巣、筋肉、皮を腑分けし、それぞれの部位から全RNAを抽出してcDNAライブリーの作製を行った。次世代シーケンサによって塩基配列を取得し、得られた配列のアセンブル、アノテーション、発現量の標準化を行い、部位毎で発現量を比較した。その結果、毒輸送関連遺伝子群には多くのアイソフォームが存在していることが明らかになった。また、これらの遺伝子群は特定の部位のみで発現していることが示されるとともに、その発現パターンには、生育段階や性別による違いが見られる可能性も考えられた。一方、部位毎に発現量が大きく異なる遺伝子群も明らかになりつつあり、発現量の再現性や生育段階による発現量の違い等を検証しつつ、今後は毒輸送関連遺伝子群と関係する他の遺伝子についても着目することで、毒輸送の分子機構の解明に繋がることが期待された。 一方、天然ヒガンフグTakifugu pardalisにつき、性成熟に伴う体内TTX分布の変化を調査するとともに、同種養殖個体(12ヵ月齢)を用いてTTXと麻痺性貝毒(PST)の投与試験を行った。さらに、それら天然および養殖個体(毒投与および非投与個体)の血漿につき、PSTBPの発現状況を調べた。その結果、ヒガンフグは食物からTTXを特異的に吸収し、普段は主に皮に蓄積するが、成熟に伴いTTXは卵巣に輸送・蓄積されるようになること、その際、卵母細胞内の毒の微細分布も次第に変化すること、PSTBPは毒の有無に関わらず構成的に発現していること、などが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要に記載のとおり、トラフグを対象に、次世代シーケンサによる全長cDNAの網羅的解析を行うことができた。しかしながら、性成熟が十分に進んだ雌個体を入手することができず、また、タンパク質レベルでの解析も若干遅れているため、成長段階や成熟段階によるTr群の発現プロファイルの相違を明らかにするには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
成長段階や成熟段階が異なるトラフグを雌雄別に複数個体収集し、cDNAシーケンシングとタンパク質レベルでの発現解析を並行して行い、Tr群発現プロファイルに関するデータを集積する。ヒガンフグにおいて、PSTBPが毒の有無に関わらず構成的に発現していることが示されたので、毒輸送関連遺伝子のみならず、各部位における毒レセプター遺伝子の探索も視野に入れて解析を行う。
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[Presentation] 遠州灘産交雑フグの毒性2016
Author(s)
福田 遼, 佐々木杜汰, 菅向志郎, 高谷智裕, 荒川 修
Organizer
平成28年度日本水産学会九州支部大会
Place of Presentation
長崎大学(長崎県長崎市)
Year and Date
2016-12-10
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