2017 Fiscal Year Annual Research Report
フクシマにおける放射性セシウムの土中の挙動・水系流出・農作物移行の総括と長期予測
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15H04564
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
塩澤 昌 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (80134154)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 修一郎 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (90355595)
西田 和弘 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (90554494)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 放射性セシウム / 河川流出 / GIS |
Outline of Annual Research Achievements |
福島県における河や川で年間に流出しているCsは、流域に沈着した量の数百分の一で、常時の流出はわずかで、量的には少ないが、この河川流出しているCsは、どこから来たのであろうか。流域の大半を占める森林であるから流出していると考えるのが普通であろうが、Csが土壌表層5cm程度の限られた層に固定されてほとんど移動せず、林地内での土壌侵食は稀であることを考えれば、森林内部からの流出は少なく、主要な流出源は、通常は水の流れがなく豪雨時にのみ水流に没する河川敷や森林内の流路で、2011年3月に河川敷や流路内に沈着して土砂に固定されたCsが豪雨時に河道内を移動しているのではないかと考えられる。この仮説を最終的に定量的に検証するためには、河川敷から流出したCsの流域全体における総量を現地調査と地形データのGIS解析で算定し、この量と農水省が継続測定している大柿ダムへの流入Csの総量と比較すればよい。 まず、流域の大小規模の異なる13カ所の河川敷において横断方向のCs表面濃度分布測定調査し、各地点のCs流出率、流出幅等を求め、これらをその地点の集水域面積(豪雨時流量に比例するはず)の関数とみて、関数形(実験式)を決めた。次に、大柿ダム流域全体の河川を地形データのGIS解析によって認識し、総延長201kmの河川を431区間に区分して、各区間の集水域面積(A)を求め、各区間のCs流出量=「区間長×Cs流出率×流出幅(豪雨時水面幅)」を全区間で積算して、河川敷からのCs流出総量を算出した。こうして得た河川敷からのCs流出総量は、農水省が継続測定している大柿ダムへの流入Csの総量と近い値となり、主たる流出源が河川敷であるとの仮説が証明された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大柿ダムの上流域全体の河川敷から流出した放射性セシウムの全量を算出するという大きな課題を達成した。これは、地上リモートセンシングによる河川敷内のCs表面濃度分布調査の結果と地形データのGIS解析とを組み合わせて可能になった成果である。そして、この河川敷流出量を農水省測定の大柿ダム流入量と比較して、流域からCs流出源が主に河川敷であることを示すことができるようになった。、
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Strategy for Future Research Activity |
大柿ダムに流入する農水省測定の放射性セシウム量は2012年より継続測定されており、2017年の最新データを加えて、また、放射能の自然崩壊を考慮して、本研究で算出した2017年時点の河川敷流出量と比較する。その上で、研究成果を論文とする。また、これ以外の市街地からの流出が水系への流出のホットスポットであることを示した研究等も論文にして公開する。
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Research Products
(2 results)