2015 Fiscal Year Annual Research Report
ナノバブルによるプロトプラスト機能の活性化と有用物質の高速度生産システムの開発
Project/Area Number |
15H04569
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
青柳 秀紀 筑波大学, 生命環境系, 教授 (00251025)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ナノバブル / エチレン / バイオリアクター / 有用物質生産 / プロトプラスト / 植物 / 微生物 / 細胞壁 |
Outline of Annual Research Achievements |
20世紀は微生物、植物などの細胞を用いた有用物質生産の時代であったが、現在、細胞を用いる従来の有用物質生産は頭打ちの状態にあり、それを基本に発展してきた生物関連産業は停滞し閉塞状態にある。本研究者はこの現状を打破する方法論の確立を目指し、細胞に代わる有用物質生産の新たな担い手として、細胞の細胞膜の外側にある細胞壁を除去したプロトプラストに注目し、プロトプラストの機能解析とナノバブルを活用することで、機能を拡大し新規な有用物質生産システムの構築を目指している。酵母(Saccharomyces cerevisiae)の細胞とプロトプラストを用いて種々検討した結果、プロトプラストは細胞に比べて高い物質移動能やペリプラズムに蓄積する有用物質のフィードバック制御からの解放など、優れた特性を有することが示唆された。得られた知見を活用し、組換え微生物が細胞内に生産した異種タンパク質を蓄積してしまう問題の解決にプロトプラスト機能の適用を試みた。異種タンパク質モデルとしてクチナーゼを選択し、組換え酵母プロトプラストを用いて種々検討した結果、細胞壁がクチナーゼ分泌の障壁になっていることが示唆された。細胞壁を除去したプロトプラストではクチナーゼが培養液中に分泌生産され、全体の生産量も増大した。物理的な強度に乏しいプロトプラストの脆弱性を補うために、プロトプラストに人工細胞壁の装着について種々検討した結果、アルギン酸カルシウムカプセルでプロトプラストを包括し、培養条件を最適化することで、攪拌振盪培養条件下でもプロトプラストは破壊されることなく、良好にクチナーゼを分泌生産することが可能となった。ナノバブルの効率的な生成条件やナノバブルの特性把握を行うと伴に、エチレンナノバブルが種々の植物や培養細胞の生理活性に及ぼす影響を検討した。1例としてエチレンナノバブルはカイワレ、ニチニチ草、レタスの種子に対して発芽促進効果を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に従い、(1)微生物および植物プロトプラストの機能解析、(2)ナノバブルが微生物、植物の細胞およびプロトプラストに及ぼす影響の解析、について研究を実施し、得られた知見を活用した新規有用物質生産システムの構築に必要な基礎的成果をあげることができた。研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの申請者の研究により、細胞と比較してプロトプラストは有用物質生産に有利な特性を有することが現象論的には示されてきたが、依然として未解明な部分が多い。そこで、引き続き、微生物のモデルとして酵母(Saccharomyces cerevisiae)、有用な薬用植物のモデルとしてニチニチ草、イチイを対象に、細胞とプロトプラストの機能の解析をおこなう。また、各種ナノバブルの培養系における挙動や諸特性を解析すると伴に、ナノバブルの諸特性が、酵母、ニチニチ草あるいはイチイの細胞やプロトプラストの種々の生理活性や有用物質生産能に及ぼす影響を、種々の培養実験やメタボミクス解析などを用い明らかにする。得られた知見を有効活用し、有用物質の最適生産条件の設定や効率的なバイオリアクターの構築を試みる。
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