2015 Fiscal Year Annual Research Report
高機能性野菜栽培法の確立に向けた環境制御による植物反応機構の多面的網羅的解析
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15H04574
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
小川 敦史 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (30315600)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原 光二郎 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (10325938)
曽根 千晴 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (30710305)
野下 浩二 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (40423008)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 植物工場 / 環境制御 / 機能性野菜 / 光合成 / ジャスモン酸 / トランスクリプトーム |
Outline of Annual Research Achievements |
レタスを水耕栽培する際に照射する光条件を変えたときの,生育・ビタミンB群含有量および抗酸化活性に与える影響を検討した。新鮮重は,対照区(蛍光灯)と比較し,赤青混合区(R50:B50)で約1.8倍に増加したが,赤色光条件下で栽培し収穫4日前から青色光で栽培した処理区では,栽培期間を通して赤色光で栽培した処理区と比較し,微量元素であるホウ素,鉄,マンガンの含有量が増加した。収穫1日前から青色光照射栽培した処理区で,ニコチン酸(ビタミンB3)含有量が対照区の約2.1倍に増加した。 照射する光の色および強度を変えた条件下で4週間以上栽培したレタスで、光強度と光合成速度の関係を示した光-光合成曲線を作成した。弱光下で栽培したレタスは、強光下で栽培したレタスに比べ、低い光強度で光合成速度が飽和した。さらに、照射する光の色によっても光-光合成曲線の関係が変化する傾向があった。 いくつかの光、温度条件下で、植物ホルモン処理した植物のアミノ酸含量の変化を調べた。ソバのスプラウトに明条件下でジャスモン酸メチル処理した結果、必須アミノ酸であるトリプトファンの含量が約2倍に増えることを見出した。 次年度に行うトランスクリプトーム解析の準備として、まず、解析用の計算機環境を整備した。また、レタスのゲノム情報の入手が限られているため、リファレンスとして用いるためのゲノム解析を行った。CTAB法によりDNAを抽出した後、RNase処理し、高純度のDNAサンプルを得た。PCRバイアスのない方法により、2種類のインサートサイズのライブラリを調整し、リード長100 bpのペアエンドの次世代シーケンシングを行った。その結果、合わせて約7億本のリードが得られ、GC含量は約37%であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では植物工場における高機能性野菜の栽培法の確立に向けて、環境制御による水耕栽培葉菜の反応メカニズム明らかにすることを目的している。この目標を達成するために、実際の植物工場での実用化を視野に入れた栽培学的研究に、植物生理学、代謝生理学、分子生物学、という基礎研究の知見を加えた「多面的」側面から、基礎研究分野で用いられている「網羅的解析」技術を加え、環境制御による高機能性野菜栽培法の確立に向けたメカニズムの解明を行う。 今年度の研究において、異なる光条件下でのレタスの生育の差を明らかにし、またその時の生長に関わる光合成特性における知見を得た。また植物ホルモン処理によるアミノ酸含有量の変化を確認し、高付加価値野菜の栽培法の確立への基礎的知見を得た。さらに、遺伝子発現の網羅的解析であるトランスクリプトーム解析に必要なレタスのゲノム解析を行った。このように栽培条件、植物の反応機構、発現遺伝子の網羅的解析の準備段階を順調に終えた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究成果を元に、異なる光条件下での代謝物質の変化を網羅的に明らかにするためにメタボローム解析を行う。この結果をもとに機能性物質の発現に至るまでに必要な代謝物質の経路をの探索を行う。また、光条件の変化に伴う抗酸化機能の変化について明らかにする。 様々な光条件下での光合成特性の解明に関して、栽培初期より時期を変えて測定を行い、生育時期ごとの光-光合成曲線の関係に与える光強度と光の色の影響を解明する。 植物ホルモン処理による植物体内のアミノ酸含有量の変化に関して、ジャスモン酸メチル処理により増加したトリプトファンが、そのままソバ中に蓄積し続けるのか、それともさらに代謝され別の化合物へ変換されるのか調査する。トリプトファンを増加させることはできたので、高含量のまま維持させる方法を探索する。また、ホウレンソウなどソバ以外の作物をジャスモン酸処理した場合、含まれるアミノ酸量がどのように変化するか調査する。 トランスクリプトーム解析に関して、高品質のリードを用いてアセンブルし、リファレンス用のゲノム配列を作成させるとともに、各種栽培条件下での遺伝子発現の網羅的解析を行う。
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Research Products
(12 results)