2015 Fiscal Year Annual Research Report
RIイメージングによる栽培診断の体系化:「核農学」の確立を目指して
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15H04578
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
藤巻 秀 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, グループリーダー (20354962)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河地 有木 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究主幹 (70414521)
中村 進一 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (00322339)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 植物 / 放射線 / イメージング / 量子ビーム / 環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は初年度として「核農学」における計測装置の多様化と高度化を目指し、農業上極めて重要な汚染元素である放射性セシウムの撮像が可能なガンマカメライメージングシステムの改良を行った。セシウム137由来の662 keVガンマ線の飛来方向を推定するためには、ピンホール型コリメータの採用が有効である。しかしながら、高いエネルギー領域のガンマ線に対応したピンホール型コリメータは穴径が小さいためカメラ感度が低くなり、細かな時間分解能でセシウム元素の動態を細かく撮像することは困難であった。これを解決するため、同じ穴径を持つピンホールコリメータを束ねる手法が有効だと考えた。 そこで、硬度の高いタングステン合金を精度良く掘削できるワイヤ放電加工技術を用いて、複数束ねることが可能なシングルピンホールコリメータを試作した。セシウム137線源を用いて、この評価試験を行ったところ、精密に加工されたピンホールコリメータによって画質が改善し、さらにこれを束ね感度を高めたマルチピンホールコリメータを構成しても画質が劣化しないことが示された。この結果を受けて、感度を約4倍に高めたマルチピンホールコリメータを製作した。これを従来のカメラに装着することで、高エネルギー領域のガンマ線を放出するRIに対応できる、ガンマカメライメージングシステムが実現した。 また、経根吸収から地上部各器官への分配に至る物質選択性の定量的指標の導出を目指し、チオール化合物がカドミウムの移行性に及ぼす影響に関して、グルタチオンとジチオトレイトールを用いた実験を行った。各物質を用いてカドミウムの吸収実験とポジトロンイメージング実験を行った結果、ジチオトレイトールとグルタチオンでは根におけるカドミウムの移行性に及ぼす影響が異なり、その結果から、制御メカニズムが異なることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画で目的としていた「計測装置の多様化と高度化」および「経根吸収から地上部各器官への分配に至る物質選択性の定量的指標の導出」の実現について、前者については本来汎用性の高いガンマカメラの感度向上に成功し、より幅広い計測への適用が可能になったこと、後者については関連成果を論文1報として発表するに至ったので、初年度として十分な達成状況にあるといえるため。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度にはハードウェア(装置)の開発研究と植物研究の具体的成果が比較的目立ったことを受け、次年度からは、イメージングデータから定量的指標を抽出するソフトウェア(プロトコール)についての開発も強化する。また、適用可能な植物種の拡大や根圏機能の解析といったその他の課題にも積極的に取り組んでいき、論文発表・学会発表を行う予定である。
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Research Products
(13 results)