2015 Fiscal Year Annual Research Report
動物の暑熱ストレス耐性向上のための包括的研究:生体と腸内細菌叢の統合制御
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15H04582
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
豊水 正昭 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (80180199)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大塚 彰 鹿児島大学, 農学部, 教授 (10233173)
陶山 佳久 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60282315)
喜久里 基 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (90613042)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 暑熱ストレス / 胸腺 / インターロイキン6 / エネルギー代謝 / 免疫変化 / 腸内細菌叢 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、暑熱負荷ニワトリにおける①生体応答(酸化ストレス・タンパク質分解・自然免疫)と腸内細菌叢の時系列応答を包括的に解明し、これに基づき、②実践的飼料資材を合理的に設計することを目的とする。本年度は、①のうち、骨格筋および主たる免疫臓器の一つである胸腺における暑熱応答の経時的変化、ならびに暑熱後期時の回腸細菌叢を解析した。その結果、33℃の慢性暑熱感作期間中において、ニワトリの胸腺では感作1日後においてIL(インターロイキン)1βの遺伝子発現量が低下し、7日後においてはTLR2、IFNγ 発現量が上昇した一方でIL6の発現量が低下していた。回腸では、暑熱感作によって菌叢が単一化する傾向が認められた。先の研究において、LPS(エンドトキシン)の流入は暑熱感作1日後に起きていることから、TLR2、IFNγの発現上昇はこの流入に起因していると考えられる。また、暑熱1日後の胸腺では、脂肪酸酸化関連酵素LCADの遺伝子発現が上昇した一方で、同酵素3HADHならびにavUCPの発現量は低下し、暑熱7日後ではGLUT2の発現量が著しく増加していた。これらの結果から、ミトコンドリアエネルギー代謝異常およびこれにともなう細胞内代謝変動が生じている可能性が推察された。骨格筋では、早期段階において抗酸化ペプチド・構成アミノ酸量が暑熱感作初期段階(~1日)において低下した一方で、免疫賦活化をもたらすグリシンの含量が暑熱感作7日後に低下した。以上の結果より、暑熱感作時においては早期段階においてニワトリ体内でダイナミックな代謝変動が起き、後期段階ではこれに適応するため、骨格筋・免疫臓器の代謝応答が生じていることが推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
暑熱感作早期段階では、体温上昇とともに摂食量の低下やパンティング、エンドトキシン流入などが生じていることが示されてきたが、本年度の研究より、代謝産物や遺伝子発現量などもこれに応じて変化していることが示された。したがって、早期段階における暑熱ストレス制御がより重要であると推察される。一方、暑熱後期段階においても、初期免疫応答に重要な胸腺におけるエネルギー代謝調節に加え、骨格筋でもアミノ酸代謝変動が生じていることが示唆されたことから、暑熱ストレス制御に向けては、感作期間に応じた最適制御資材を探索する必要があることが推察された。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度で明らかにした暑熱ストレス応答仮説メカニズムに基づき、骨格筋・肝臓・脾臓・腸管におけるストレス感受ポイントに焦点を絞り、「酸化ストレス」、「タンパク質分解」の抑制、ならびに「免疫・内毒素」、「腸内細菌叢」の最適化をもたらす飼料資材を探索する。候補物質として、抗酸化物質:アスコルビン酸、セレン含有有機製剤、グルタチオン、α-トコフェロール、CoQ10、β-カロテン、またプロバイオティックス:麹菌・枯草菌製剤などを添加した飼料を調製し、2週齢肉用鶏ブロイラーに給与し、34℃で7日間暑熱曝露し、屠殺後、骨格筋、肝臓、脾臓、小腸、消化管内容物(空・回腸、盲腸)を採取・凍結保存する。前年度と同様に酸化ストレス、タンパク質分解、免疫・血中内毒素ならびに腸内細菌叢に関連する各生化学パラメーター・遺伝子発現量を詳細に調べ、添加資材による暑熱ストレス抑制効果の有無とその効果の大きさを比較検討する。さらに、最も効果が期待できる資材については、その具体的作用点を推定し、暑熱ストレス応答メカニズムの中で位置づけを検討する。なお、細菌叢データについては、生体の各ストレス応答との関連性を主成分分析などで解析するだけでなく、データベース化も視野に入れて、家禽における腸内細菌叢の研究基盤を構築する予定にある。
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Research Products
(5 results)