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2017 Fiscal Year Annual Research Report

狂犬病の発症後治療法開発のための実験的研究

Research Project

Project/Area Number 15H04593
Research InstitutionTottori University

Principal Investigator

寸田 祐嗣  鳥取大学, 農学部, 准教授 (20451403)

Project Period (FY) 2015-04-01 – 2019-03-31
Keywords人獣共通感染症 / 獣医病理学 / ウイルス / 狂犬病 / 神経細胞 / 脳脊髄液
Outline of Annual Research Achievements

狂犬病は古来より存在する致死的なウイルス性人獣共通感染症であるにもかかわらず、現在もなお世界中で多発しており、WHOの報告によると年間5万人以上が犠牲になっていると推測されている。本病の問題点として、病理発生の詳細が不明であること、神経症状発現後の治療法が確立されていないこと、が挙げられる。また、コウモリなどの多種多様な生物が本原因ウイルスを保有する可能性があり、狂犬病清浄国である本邦においても無視できない感染症である。
上記した問題点を克服して狂犬病制圧に貢献する知見を得るために、本研究では実験的に狂犬病を起こした動物の獣医病理学的解析を中心として研究を実施している。平成29年度の研究実績として、狂犬病ウイルスの脳内での拡散阻害に関与する要因として、これまで注目してきた脳脊髄液中のウイルス中和抗体の存在に加えて、細胞傷害活性を有するTリンパ球、すなわちタンパク質分解酵素であるグランザイムを有するリンパ球の脳内浸潤が関与することを明らかにした。さらに感染動物の脳脊髄液中にアポリポプロテインが増加していること、その脳内での分布はミクログリアに一致することを明らかにした。脳脊髄疾患とアポリポプロテインの関連についてはわずかに報告があるのみであり、新規性のある知見につながる可能性が高い。しかし、アポリポプロテインには種類が多数存在するため、特にアポAとアポEに注目して解析を進めている。また、ラットを用いて、実体顕微鏡下にて、血液の混入を避けながら脳脊髄液を採取・解析することが可能となったため、今後の解析への応用性が拡がった。脳脊髄液中に投与した異物(色素)の分布を詳細に観察した結果、深部の頚部リンパ節との連絡が再確認され、その一部は嗅球部を介している可能性が考えられた。以上の成績は狂犬病ウイルスの生体内制御、予防・治療に関連する基礎的知見を提供するものと考えられる。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

先行研究ならびに本研究によって、同じ狂犬病と言っても、実験に用いる動物やウイルス株(種類)によってその病原性は様々であることが明らかになった。また脳脊髄液の採取・解析については中型動物(ウサギ)を利用していたが、より小型で汎用性の高いラットにて解析が可能となった。ラットからの脳脊髄液の採集は文献ならびに方法論としては過去に報告があるものであるが、難易度が高い技術であった。これまで試行錯誤することによって研究代表者自身によっても小型実験動物から脳脊髄液の採取が可能となった。脳脊髄液の解析の幅が拡がったことについては、今後の研究推進にとって非常に有益であると評価する。
並行して、狂犬病発症動物あるいは狂犬病発症後耐過した動物の病理学的解析を推し進めている。動物を使った実験では、培養細胞や試験管内での試験とは異なり、個体差、種や系統による感受性の差異、連続した経時変化の追跡が難しい、等の困難が伴う場合が多い。しかし、一方で全身の状況、すなわち個体として病気の状態を総合的に評価することができる利点もあるため、その点を重視して慎重に解析を継続している。
以上、狂犬病の予防・治療法開発のための実験的研究をバランスよく進捗中であり、今後の研究発展も見込める状況であると自己点検したため、現在までの進捗状況について、概ね順調に進展している、と判断した。

Strategy for Future Research Activity

本研究は中枢神経系に感染するウイルスの増殖制御を目的として、獣医病理学的観点ならびに脳脊髄液の変化に注目して研究を進めている点が特徴である。
近年、マウスで報告された脳脊髄液の流れについての知見として、大きなものが2つある。ひとつは、膠細胞リンパ装置 Glymphatic systemという考え方であり、もうひとつは硬膜内リンパ管様構造 Dural lymphatic vesselsの発見である。脳脊髄液のウイルス中和抗体の作用や頚部リンパ節に注目している点において、これらの知見は本研究のコンセプトに合致した部分があるため、参考にしたいと考えている。特に、マウス以外の他動物種での知見は乏しく、また病気との関連についても不明点が多いため、狂犬病等の神経系感染症とこれらの関連について新しい知見を得られる可能性がある。その足掛かりとして、まずラットの硬膜内リンパ管にフォーカスして病理学的および免疫組織化学的検索を進める。
また、A-Iまで多様な種類があるアポリポプロテインの発現変動と狂犬病ウイルスの病原性の関連についても解析を進める。特に、血液脳関門の機能、アポ産生部位の同定などを生化学的、分子学的、病理組織学的に推進する。
さらに、深部の頚部リンパ節の活性化とその脳内への誘導については、各種経路より免疫(抗原刺激)したラットの各種リンパ節と脾臓を用いて、抗原特異抗体の産生、培養の可否、ミエローマ細胞との融合・不死化、クローン化を進め、その応用性について検討を進める。特に頚部リンパ節において活性化された免疫細胞の脳内への供給制御機構について明らかにしたいと考えている。
実施状況と得られた成績に基づき、成果を国内外の学術集会で発表し学術誌への投稿を進める。

  • Research Products

    (1 results)

All 2017

All Presentation (1 results)

  • [Presentation] 狂犬病ウイルス野外株接種ウサギの中枢神経系病変に関する実験病理学的研究2017

    • Author(s)
      黒川葵,寸田祐嗣,Sawang Kesdansakonwut,西園 晃,山田健太郎,森田剛仁
    • Organizer
      第160回日本獣医学会学術集会

URL: 

Published: 2018-12-17  

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