2017 Fiscal Year Annual Research Report
ミエリン変性疾患解明に向けたミエリンとニューロンの新たな相互関係の解明
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15H04595
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
桑村 充 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (20244668)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井澤 武史 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (20580369)
山手 丈至 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (50150115)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | オリゴデンドロサイト / ミエリン / モデル動物 / 多発性硬化症 / 脱髄 |
Outline of Annual Research Achievements |
Dopey1欠損によるミエリン変性モデルVFラットの詳細な病態解析およびDOPEY1蛋白の機能解析を行った.①VFラットの病態解析: 10 週齢のVFホモ型発症ラット3 匹,野生型対照ラット6 匹を4%パラホルムアルデヒドで浸漬固定後,パラフィン包埋し,組織切片を作製した.作製した切片に対してオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)マーカーPdgfrα(血小板由来成長因子受容体)mRNAに対するin situ hybridizationを行い,Pdgfrα陽性細胞数をカウントした.②DOPEY1蛋白の機能解析: 野生型対照ラットの脳ライセートから,共免疫沈降法によりDOPEY1蛋白複合体を精製した. SDS化したDOPEY1蛋白複合体に対してWestern blot法と銀染色を行った.銀染色で検出されたバンドを細切してLC/MS解析を行い,DOPEY1蛋白と相互作用する蛋白の同定を行った.同定された蛋白に対する逆共免疫沈降法を行った. その結果,①脊髄Pdgfrα陽性OPC数は,野生型対照ラットと比較してVFホモ型発症ラットで,増加傾向にあった.②DOPEY1蛋白と複合体を形成している蛋白としてFibromodulinやADP-ribosylation factor-like protein 2 (ARL2)を候補蛋白として実験を進めたが,DOPEY1蛋白との結合性を証明することができなかった. カナバン病モデルAspaノックアウトラットの病態解析を行った.ホモ型の大脳,小脳,脊髄といった中枢神経系の広範囲で空胞形成が認められた.ホモ型ラットでは脊髄全体のミクログリアと脊髄灰白質のアストロサイトの活性化がみられ,脊髄全体で未熟オリゴデンドロサイトの増加および成熟オリゴデンドロサイトの減少も認められた.透過型電子顕微鏡では,脊髄の白質および灰白質の軸索内でミトコンドリアの腫大や増数,軸索の水腫,ミエリンの離解が認められた.白質の水腫状となった軸索内に,電子密度の高い糸くず状およびドーナツ状の異常な構造物も散見された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自然発症カナバン病モデルであるTRMラットの解析に加えて,Aspaノックアウトラットの病態解析に着手し,興味深い結果を得ている.また,VFラットの原因遺伝子Dopey1と相互作用する因子の同定のために,免疫沈降法を進めており,おおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
DOPEY1蛋白と相互作用する可能性のある幾つかの候補蛋白を同定したが,確定には至らなかった.今後は,野生型あるいはVFラットの脊髄から凍結切片を作製し,候補蛋白とDOPEY1蛋白に対する抗体を用いた多重免疫組織化学を行い,これらの候補蛋白の発現動態を中心に解析を行う予定である.また,Aspaノックアウトラットについては,よりシンプルな部位として視神経を選び,免疫組織化学,電子顕微鏡的な解析を行う予定である.
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