2016 Fiscal Year Annual Research Report
ノトバイオート技術を基盤としたハダカデバネズミの真社会性制御機構の解明
Project/Area Number |
15H04604
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
森田 英利 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (70257294)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤 英博 九州大学, 生体防御医学研究所, 特任講師 (10353468)
三浦 恭子 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 准教授 (80583062)
菊水 健史 麻布大学, 獣医学部, 教授 (90302596)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ハダカデバネズミ / ノトバイオートマウス / 腸内細菌叢解析 / エピジェネティクス解析 / 不妊 |
Outline of Annual Research Achievements |
ハダカデバネズミのworker(コロニーを確認した13匹、同じコロニーの個体あり)、king(すべてコロニー違いの4匹)、queen(すべてコロニー違いの4匹)の糞便を採取した。各糞便から細菌ゲノムを精製し、次世代シークエンサーMiSeq(Illumina社)を用いて細菌ゲノムの16SリボソームRNA遺伝子のV3-V4領域の塩基配列を決定した。すべてのサンプルにおいて十分なリード数が得られていたのでハダカデバネズミ腸内細菌叢の網羅的解析を行った。げっ歯類であるC57BL/6系統とBalb/c系統のSPFマウスおよびハダカデバネズミの腸内細菌叢を対照として主成分分析法の一つであるUniFrac解析を行った結果、その両者は異なるクラスターを形成していた。腸内細菌叢を明らかにしたqueenの腸内細菌叢(糞便)をC57BL/6系統の無菌マウスに経口投与し、ノトバイオートマウスを作製した。その後、2週間ごとの継時的に糞便を採取し、網羅的な細菌叢解析を行っている。対照にはマウスとは異なるモルモットの糞便をC57BL/6系統の無菌マウスに経口投与したものを用いている。 また、ハダカデバネズミのworkerから子宮と卵管を採取し、次世代シークエンサーHiSeq(Illumina社)を用いてエピジェネティクス解析を行うための塩基配列を決定した。その結果、両サンプルから十分なリード数を得ることができ、それらの配列はハダカデバネズミのゲノム配列と一致することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ハダカデバネズミのworker、king、queenの糞便を採取することができ、各階層のハダカデバネズミの網羅的な腸内細菌叢解析を行った。C57BL/6系統とBalb/c系統のSPFマウスおよびハダカデバネズミの腸内細菌叢とUniFrac解析を行った結果、それらは異なるクラスターを形成しており、ハダカデバネズミが固有の細菌叢を有していることが明らかとなった。そのうちのハダカデバネズミのqueen腸内細菌叢とworker腸内細菌叢をそれぞれ移植するために凍結しておいた糞便をC57BL/6系統の無菌マウスに経口投与し、ノトバイオートマウスを作製した。その後、2週間ごとの継時的に糞便を順調に採取し、網羅的な細菌叢解析を行っている。対照にはマウスとは異なるモルモットの糞便をC57BL/6系統の無菌マウスに経口投与したものを用いている。その結果、無菌マウスのままの状態や2週間程度の無菌を維持した状態からの他の生物種の腸内細菌叢を無菌マウスに移植した場合にはメスの性成熟が遅れる傾向を理解した。 また、次世代シークエンサーHiSeq(Illumina社)を用いてエピジェネティクス解析を行うためのハダカデバネズミのworkerから子宮と卵管を採取し、その塩基配列はハダカデバネズミのゲノム配列と一致することを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
各階層のハダカデバネズミの網羅的な腸内細菌叢解析の結果から、worker、king、queenの三者に共通する細菌および各階層に特異的な細菌について検討する。また、ヒト腸内細菌叢を無菌マウスに経口投与した際には、多くの研究においてその生体影響が認められている背景を理解し、ハダカデバネズミの細菌叢が、無菌マウスにどくれらい定着できているのかについては網羅的な細菌叢解析により確認する。他のげっ歯類の腸内細菌叢とも比較解析を行って各階層に特異的な細菌を生菌分離できれば、無菌マウスを用いてモノアイソレート(単独細菌定着マウス)の作出も可能となる。queen腸内細菌叢とworker腸内細菌叢によるノトバイオートマウスにおいては、Treg細胞や17型ヘルパーT細胞の変化、性ホルモンの分泌および、卵巣、子宮、腸管のDNAメチル化をエピジェネティクスの観点から調べる予定である。 また、エピジェネティクス解析を行うためのハダカデバネズミのworkerから子宮と卵管を採取し、その塩基配列はハダカデバネズミのゲノム配列と一致することを確認したので、今後、C57BL/6系統とBalb/c系統のSPFマウスとの比較解析を行っていく。また、現在はハダカデバネズミのworkerから子宮と卵管のサンプルであるが、脳、腎臓、表皮などのサンプリングも予定しており、可能であればハダカデバネズミのqueenについてもエピジェネティクス解析を実施したい。
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