2016 Fiscal Year Annual Research Report
バキュロウイルス増殖戦略研究の新展開:非必須遺伝子群に秘められた必須性の解明
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15H04608
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
伴戸 久徳 北海道大学, 農学研究院, 教授 (20189731)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 昌直 北海道大学, 農学研究院, 助教 (20517693)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 昆虫機能利用 / バキュロウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はBmNPVのこのタンパク質高発現能を利用し、タンパク質発現ベクターとして改良を進めるため、遺伝学的なBmNPV改変及び解析を進めている。多角体遺伝子プロモーターからレポーター遺伝子を発現する改変ウイルスを使うことによって、ウイルス増殖量測定を簡便化し(以後、レポーター遺伝子発現測定から推定されたウイルス増殖量を「増殖表現型」と呼ぶ)、この改変ウイルスから遺伝子欠失ウイルスライブラリーを構築し、その増殖表現型を解析してきた。これまでに、ウイルス遺伝子を単一遺伝子を欠失させた際に増殖表現型に壊滅的な影響を与える遺伝子(必須遺伝子)と与えない遺伝子(非必須遺伝子)に分類した。本研究では複数の遺伝子の組み合わせによって制御されているウイルス増殖機構を理解し、バキュロウイルスの増殖機構についての研究でこれまで解析されてこなかった機構を明らかにすること、そして、BmNPV組換タンパク質発現ベクター改変方法の新規知見を得ることを目的に研究を進めている。H28年度においては(1)H27年度に同定した、同時に欠失させた場合にのみ、ウイルス増殖量を大きく低下させる3遺伝子の組み合わせについて、全ての1遺伝子、2遺伝子、3遺伝子欠失ウイルス(組み合わせウイルス)を作製し、遺伝子間の相互作用等を定量的に解析するための材料が整った。また、(2)ウイルス遺伝子を網羅的に測定する方法を新規に開発し、ウイルス増殖表現型やその他の表現型だけではなく、表現型発揮に至る間のウイルス遺伝子の発現をモニターし、表現型の違いの原因となるウイルス遺伝子発現変化を推定する手法を確立した。これらにより、ウイルス遺伝子発現・ウイルス増殖等の様々な階層について解析を進める基盤が整い、非必須遺伝子間の組み合わせによるロバストな増殖機構を定量的に解析することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H28年度においてはH27年度に同定した3遺伝子について単遺伝子・多重遺伝子欠失ウイルスの構築を予定通り行うことができた。これらの組み合わせウイルスの詳細な表現型としてウイルストランスクリプトームデータを取得するためにqPCRを元にしたウイルストランスクリプトーム解析方法を確立した。当初、本解析はRNA-seq等の汎用されているシークエンス技術の利用を計画していた。しかし、本研究では増殖性の低い遺伝子欠失ウイルスについて解析するため、ウイルスDNAクローン(バクミド)を用いている。バクミドをトランスフェクションした細胞からのRNA-seqではBmNPVの遺伝子に由来するリードを十分数取得することが困難で、独自にBmNPVトランスクリプトームデータ取得手法を開発することが必要であることがわかった。H28年度にこの問題を解決することに成功し、組み合わせウイルスのトランスクリプトーム解析を行える技術的基盤を確立できた。
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度は組み合わせウイルスのトランスクリプトーム解析を行い、特定のウイルス遺伝子が組み合わさった場合、つまり特定遺伝子間の相互作用がある場合にのみ、発現量が変化するウイルス遺伝子の同定を行う。また、組み合わせウイルスのその他の表現型を解析し、複数非必須遺伝子が必要となる機構の特定、およびトランスクリプトーム解析を行うためのウイルス感染ステージ(感染後時間)を特定する。そして、これらウイルス遺伝子発現量、その他表現型データを統計学的に解析し、ウイルス増殖において、それら遺伝子が組み合わせで果たす貢献を定量的・システムレベルで理解することを目指す。
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