2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H04612
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
LEE JAEMAN 九州大学, 農学研究院, 助教 (50404083)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 糖鎖修飾 / バキュロウイルス発現系 / N型糖鎖 / O型糖鎖 |
Outline of Annual Research Achievements |
バキュロウイルス発現系は、非常に優れた難分泌性機能ペプチド生産系として知られているが、翻訳後修飾、特に糖鎖修飾については改良すべき点や未解明の部分が多い。糖鎖構造の相違が組換えタンパク質の安定性や活性、抗原性に影響を及ぼす場合があり、創薬分野では昆虫細胞で発現したタンパク質糖鎖のヒト型化が求められている。タンパク質の糖鎖修飾にはN型とO型の2種があり、N型については、その構造が哺乳類由来の構造と異なることから、そのヒト型化を目的として、多数のヒト由来糖転移酵素を導入した細胞を樹立し、その細胞を用いて生産したタンパク質の糖鎖を詳細に解析することで、付加効率に問題は残るが改変に成功した。特に、N-アセチルグルコサミン分岐型の糖鎖構造を誘導するMGAT5A及びMGAT5B導入細胞では、糖鎖の付加が確認されなかったので、繰り返し実験を行ったが、同様の結果であった。一方、MGAT4導入細胞は標的タンパク質の不要化が起こり、この構造を持つ糖鎖は、昆虫細胞では許容されない可能性が示唆された。さらに、シアル酸の付加には、その前駆体の生合成経路の導入が必要との報告があったため、同経路に関わるヒト由来のGNE、SAS、CSS、CSTの4遺伝子を昆虫細胞に導入したがシアル酸の付加は検出できなかった。また、O型糖鎖付加の分子機構解析については、まず、第一段階の転移反応であるタンパク質のSer/Thr残基に単糖を転移する酵素を同定し、その解析を進めた。また、昨年度は、N型糖鎖修飾解析用のレポーター系を開発したが、本年度は、O型糖鎖修飾を解析する上で必須となるレポータータンパク質の発現、解析系を構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度では、カイコ培養細胞において糖鎖修飾経路を改変し、分泌された組換えタンパク質の糖鎖構造を昆虫型から複合型などへの構造変化が確認されたが、改変効率が低いことが課題であった。今年度は、効率の向上のため、ヒト糖転移酵素発現細胞の選抜や、昆虫型経路を阻害するRNAi の条件検討を行った。また、MALDI TOF-MSなどを用いた詳細な質量解析による糖鎖構造の解析の結果、改変効率の上昇が確認されたが、高感度な解析でより、マイナーな構造も検出できるようになったことから、当初想定していたより、構造上の不均一が高いことが明らかになった。このことから、細胞内部での改変による品質向上の限界も考えられた。 O型糖鎖修飾の第一段階を触媒する酵素については、配列の相同性からだけでは当該酵素を同定することは困難であり、機能を指標とした評価系の開発が必要であった。そこで、ヒトムチンをレポーターとしたアッセイ系を開発し、候補遺伝子を網羅的に機能阻害することで、O型糖鎖修飾が起こらなくなる遺伝子の同定を進めた結果、1つの遺伝子について、O型糖鎖修飾の欠損が認められた。そこで、同酵素の分子機能解析を進めると共に、過剰発現や機能阻害が、糖鎖修飾のみならず、タンパク質生産量や分泌効率に与える効果についても解析を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに、N-結合型糖鎖のヒト型化については一定の成果が得られたため、本年度は、O-結合型糖鎖修飾を中心に研究を進める。Ser/Thr残基に最初の担当を付加するNalNAc転移酵素については、同定と大まかな正常改正が終了したため、論文化に向けて詳細な解析を継続する。本年度は、特にそのコア構造にガラクトースを転移するC1GalT1とその特異的なシャペロンであるCosmcの解析を中心に研究を進める。 昨年度までに選抜した難分泌性タンパク質発現ウイルス感染細胞と易難分泌性タンパク質発現ウイルス感染細胞との間で、次世代シーケンサーを用いたRNA-Seq解析を行い、分泌に関与する新規遺伝子の単離を行う。また、所属研究室で別途研究を進めているカイコ遺伝子ネットワークモデルを使用し、難分泌の原因遺伝子の探索と、同定できた場合は、その機能解析を進める。 これまでの研究より、タンパク質のN末端側に糖鎖付加部位があるタンパク質は発現が良い傾向にあることから、N-末端にN-結合型、O-結合型糖鎖付加部位を導入し、その効果を検証する。 また、バキュロウイルス発現系を用いたタンパク質高生産性細胞と低生産性細胞との比較RNA-Seq解析から、いくつかの発現に相違のある遺伝子候補を選抜している。これらの中より遺伝子ノックダウン法を用いて、バキュロウイルス発現系におけるタンパク質生産能の向上に寄与する遺伝子を同定し、その機能を解析する。
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