2016 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳類細胞における浸透圧ストレス受容・応答機構の解明
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15H04643
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
名黒 功 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 准教授 (80401222)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 浸透圧ストレス / シグナル伝達 / siRNAスクリーニング / ASK3 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度ゲノムワイドsiRNAスクリーニングにより探索したASK3およびNFAT5の浸透圧ストレス応答性を制御する遺伝子群について、分子レベルの詳細な解析を行った。まず、ASK3の高浸透圧による脱リン酸化を担うメカニズムについて、スクリーニングから得られた複数の候補遺伝子を解析することで、タンパク質分子間の結合や、ユビキチン化に関連する分子が関与することを明らかにした。また、スクリーニングで得られた遺伝子間の関係性も明らかになりつつある。ASK3の低浸透圧によるリン酸化についても、スクリーニングで得られた候補遺伝子の中からある受容体分子に注目し、この受容体が低浸透圧ストレスに応答すること、受容体のアゴニストでASK3の活性化が観察されることを見出した。この受容体が浸透圧感知の新たなメカニズムに関与する可能性がある。NFAT5のスクリーニングで得られた遺伝子群についてバイオインフォマティクスを利用した解析を行ったところ、ある一連のシグナル伝達経路に含まれる遺伝子群がまとめて得られていることが分かった。これらの遺伝子について検証したところ、内在性のNFAT5の核内移行にも影響を与えることが分かり、NFAT5制御の新たなシグナル伝達経路として注目すべき知見である。 ASK3の結合分子探索のための特異的クロスリンク法において、感度の高い質量分析計で解析を行い、現在のリガンドを用いたサンプルから得られる情報は一通り得た。また、同時に並行して進めていた高浸透圧で形成されるASK3顆粒の構成因子をMSにより網羅的に同定した。同定したタンパク質について解析したところ、高浸透圧ストレス下でのASK3の構造安定性と活性変化に影響する因子を見出した。 ASK3を含めた浸透圧応答性分子の病態への関与の解析のため、急性臓器炎症モデルを用いてASK3 KOマウスの解析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究では、上記のとおり計画していたゲノムワイドsiRNAスクリーニングから得られた遺伝子について具体的に分子レベルの解析を進めることができ、得られた候補遺伝子間の関係性にまで踏み込んだ知見が得られてきている。ASK3の低浸透圧応答や、NFAT5の高浸透圧依存的な核内移行を制御する新たなシグナル伝達経路の具体的な候補も上がっており、来年度このシグナル伝経路の妥当性や意義について明らかにしていく。このようにスクリーニング結果をもとにした分子レベルの解析については順調に進行している。 分子特異的クロスリンク法では、感度の高い質量分析計の導入を行い、詳細な解析を行ったが、現在のリガンドによるクロスリンクでは高浸透圧特異的にASK3自身のクロスリンク割合が上がるという結果に留まり、他の結合分子を見出せていない。リンカー部位の長い新たなリガンドの使用などの工夫が必要と考えられ、この部分については進捗がやや遅れている。一方、これを補完する形でASK3顆粒に含まれる構成因子の同定と解析を進めることができており、ASK3相互作用因子の解析全体では概ね計画通りの進捗状況と考えられる。 今後の個体レベルの解析に備えて、急性臓器炎症モデルの試行やASK3に関連する遺伝子改変マウスの導入も順調に進んでおり、来年度の研究も滞りなく進められる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、まず分子メカニズムについて、スクリーニングや結合分子解析で得られた分子については今年度までの研究で妥当性が確認できたので、ASK3やNFAT5の制御におけるシグナル伝達経路としての関わり、浸透圧応答の分子メカニズム、ASK3とNFAT5の制御にクロストークが存在するかを中心に解析を進める。これにより、新たな浸透圧ストレス受容・応答メカニズムを分子レベルで明らかにすることを目指す。 分子レベルで明らかにした浸透圧応答メカニズムが個体レベルでどのような役割を担うかについて、病態モデルなどマウス個体を用いた実験を行う。既に解析を始めた急性臓器炎症モデルや免疫への関与を中心に解析を進める。
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Research Products
(10 results)