2016 Fiscal Year Annual Research Report
HLA導入マウスを用いた特異体質性肝障害の発症機序解明と前臨床予測法の基盤構築
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15H04661
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
伊藤 晃成 千葉大学, 大学院薬学研究院, 教授 (30323405)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 重樹 千葉大学, 大学院薬学研究院, 助教 (30728366)
関根 秀一 千葉大学, 大学院薬学研究院, 講師 (70401007)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 特異体質毒性 / HLA / 肝障害 / 自然免疫 / 獲得免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度の検討から、HLA-B5701トランスジェニックマウス(B5701-Tg)は、TLR4リガンドであるLPSによって自然免疫を活性化した状態でリスク薬物の一つであるアバカビル(ABC)を投与しても肝障害は見られなかった。少なくとも肝細胞のレベルでHLAによる薬物提示が行われているか確認するため、野生型マウスより肝細胞を単離してアデノウィルスでHLA-B5701とHLA-B5703を一過性に高発現させたものを用意した。ABCを100-500μM曝露後にHLA複合体を免疫沈降で回収し、ここに含まれるABCをLC-MSMSで定量したところ、B5703では検出限界以下であったが、B5701では曝露濃度依存的に提示が確認された。マウス肝細胞に発現したHLA-B5701が少なくともABCを提示する機能は有することが分かったため、次にLPS以外のTLRリガンド併用により肝障害が起こるか検討した。具体的にはTLR9リガンドのCpG-ODNを用いた。CpG-ODNは、末梢から肝へのリンパ球浸潤の活性化ならびに寛容系抑制作用が過去に知られている。CpG-ODNを前処置してからABCを混餌で投与すると、1-2週間付近でB5701-TgでALT上昇を認め、この変化は同腹コントロールおよびB5703-Tgでは認められなかった。ここでABCの代わりにフルクロキサシリンを用いた場合は、2週間投与してもALT上昇はいずれのマウス群でも見られなかった。以上より、リスク多型HLA-B5701、TLR9を介した自然免疫活性化、リスク薬物の条件を揃えることで肝障害を再現できる可能性があることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Tgマウスを安定的に利用できる状況にあり、ここに種々の被験薬物を投与して肝障害マーカーをモニタする試験がルーチンに行えるようになった。また、Tgマウスより肝細胞を単離培養し、薬物曝露による影響を詳細に観察するためのin vitro試験系も確立した。免疫寛容の関与を調べるため、PD-1などの主要分子についてmRNA定量のためのPCR条件確立、また肝非実質細胞中のT細胞ポピュレーション解析のための実験系確立も順調に整いつつある。2年目までの検討から、TLR9リガンドで自然免疫を活性化しておくことでHLAを介した肝障害発症をマウスで再現可能であることが分かってきたが、肝障害の増悪までは認められていない。臨床における肝障害増悪を再現するにはPD-1などの免疫寛容を抑制する必要もあると考えに至ったことから、既にその準備も進めている。具体的にはPD-1ノックアウトを既に購入し、次年度以降のTgマウスとの交配に向けてラインの繁殖が順調に進んでいるところである。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目までの検討から、TLR9リガンド(CpG-ODN)で自然免疫を活性化しておくことでHLAを介した肝障害発症をマウスで再現可能であることが分かってきたが、ABCを連投しても肝障害の増悪までは認められていない。増悪を再現するにはPD-1などの免疫寛容を抑制する必要もあると考えられる。そこで、今後は免疫寛容の主要分子であるPD-1を欠損するノックアウトマウス(既に購入して繁殖中)とTgマウスを交配し、新たにHLA-Tg/PD-KOマウス樹立を試みる。このマウスにCpG-ODNを前処置し、薬物を長期投与することで肝障害の増悪まで再現できるか検討する。
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