2015 Fiscal Year Annual Research Report
危険ドラッグの生体への障害メカニズムおよびShati/Nat8lによる保護効果
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15H04662
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
新田 淳美 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 教授 (20275093)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮本 嘉明 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 准教授 (20449101)
宇野 恭介 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 助教 (30608774)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 危険ドラッグ / メタンフェタミン / 薬物依存 / THC |
Outline of Annual Research Achievements |
危険ドラッグはカチノン系とカンナビノイド系に大別される。メタンフェタミンおよびテトラヒドロカンナビノール (Tetrahydrocannabinol; THC)が前者および後者のそれぞれ代表である。マリファナ成分にも含まれるTHCの毒性や依存性に対するShati/Nat8lの抑制効果を本年は検討した。Shati/Nat8lを組み込んだウィスルベクターをマウス脳に注入し、側坐核でのShati/Nat8lの発現量を増加させた。THCの投与は、不安作用や鎮痛作用を発現させるが、マウス側坐核でのShati/Nat8lを発現増強させることで、これらの作用を部分的に抑制した。 また、カチノン系薬物の代表であるメタンフェタミンによって、Shati/Nat8lの発現量が増加することを我々は今までにも明らかにしていたが、マウス側坐核における調節機構についても分子生物学的に検討をした。Shati/Nat8lのプロモーター部位については、今までに全く明らかにされていなかったが、マウスShati/Nat8lのプロモーター部位を明らかにし、3つの転写調節部位があることを示した。その中で、サイトカインおよびcAMPの反応性のあるドメインがメタンフェタミン誘発の発現増強に効果があることを証明した。 本研究結果は、危険ドラッグのカチノン系とカンナビノイド系の両方について、Shati/Nat8lに保護効果があること、さらには、発現調節作用があることを明らかにし、依存薬物乱用のための予防、診断および治療法につながることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的であるShati/Nat8lの危険ドラッグ薬理作用への抑制効果については、カチノン系の代表としてメタンフェタミン、カンナビノイド系の代表として、THCを対象として、予定通りに研究が進捗した。我が国で、危険ドラッグは今までに多様されていた典型的な違法薬物とは異ることから、その未知の毒性や作用が問題視されていたMethylenedioxypyrovalerone (MDPV)、メフェドロン、α-Pyrrolid inopentiophenone(α-PVP)や合成カンナビノイド系の代表として、JWH-018およびAM-2201の検討を当初は予定していたが、これら薬物については、2014年12月の医薬品医機器法の改正で、これらのすでに法規制がされている薬物での事犯が見られなくなった。そのこともあり、すでに社会で乱用される可能性が低くなっているこれらの典型的危険ドラッグよりも、カンナビノイド系薬物の代表であるTHCについて深く研究を実施した。THCは2014年から15年にかけて、海外の一部の地域にて、法規制が緩和され、我々日本からの旅行者も使用できることから、日本でもブレイクする可能性があり、先駆けて、その作用メカニズムや他の乱用薬物との相乗的作用の検討を行うことは意義深いこと考えられる。 しかしながら、THCは、人間においては、乱用性や依存性が高いもののマウスなどの実験動物で行動変化を捉えることは容易でなく、先行研究もほとんどなかった。我々は本年度の研究でマウスへのTHC投与への行動変化を理論的に捉えることに成功した。本投与モデルマウスを用いて、Shati/Nat8lの危険ドラッグの薬理作用の抑制メカニムズを明らかにした。これらの新知見は、新たな乱用薬物の薬理作用発現機構に迫ることができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の本研究では、危険ドラッグの1つで、合成カンナビノイド系の基本骨格であるTHCの薬理作用をマウスで検出することに成功し、その作用の一部は、Shati/Nat8lで抑制されることも見出した。Shati/Nat8lは、N-acetulasparatate(NAA)やNAA-glutamate (NAAG)の産生促進を介してメタンフェタミンの毒性を抑制することを我々は、すでに報告しているが、THCへの毒性抑制に対するメカニズムを検討する予定である。その方法としては、NAAやNAAGの脳内含量メカニズムの変動を明らかにし、さらには、in vivo マイクロダイアリシスによるドパミンを含む神経伝達物質の脳内遊離量の変動を明らかにする。また、メタンフェタミンとTHCの毒性発現の作用機序として大きく異なる点として、γ-アミノ酪酸 (GABA)神経系への関与があることから、、Shati/Nat8lへのGABA作動性神経系への効果について重点的に検討をするつもりである。 それらのShati/Nat8lによる危険ドラッグの毒性発現抑制メカニズムをもとにして、危険ドラッグの毒性のスクリーニングの方法の確立や治療薬の検索につなげる予定である。特に、メタンフェタミンによるShati/Nat8lの発現増強がそのプロモーター部位での調節によることが明らかとなったことから、メタンフェタミンと類似の薬理作用を持つ化合物のスクリーニング法を応用して、新たな危険ドラッグの検出方法の創生にも発展させるつもりである。
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Research Products
(28 results)
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[Journal Article] Deletion of SHATI/NAT8L decreases the N-acetylaspartate content in the brain and induces behavioral deficits, which can be ameliorated by administering N-acetylaspartate2015
Author(s)
Toriumi K, Mamiya T, Song Z, Honjo T, Watanabe H, Tanaka J, Kondo M, Mouri A, Kim HC, Nitta A, Fukushima T, Nabeshima T.
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Journal Title
Eur Neuropsychopharmacol.
Volume: 25
Pages: 2108-2117
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] The Piccolo Intronic Single Nucleotide Polymorphism rs13438494 Regulates Dopamine and Serotonin Uptake and Shows Associations with Dependence-Like Behavior in Genomic Association Study.2015
Author(s)
Uno K, Nishizawa D, Seo S, Takayama K, Matsumura S, Sakai N, Ohi K, Nabeshima T, Hashimoto R, Ozaki N, Hasegawa J, Sato N, Tanioka F, Sugimura H, Fukuda KI, Higuchi S, Ujike H, Inada T, Iwata N, Sora I, Iyo M, Kondo N, Won MJ, Naruse N, Uehara-Aoyama K, Itokawa M, Yamada M, Ikeda K, Miyamoto Y, Nitta A.
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Journal Title
Curr Mol Med
Volume: 15
Pages: 265-274
Peer Reviewed
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[Journal Article] Stability of octreotide acetate decreases in a sodium bisulfate concentration-dependent manner: compatibility study with morphine and metoclopramide injections.2015
Author(s)
Tanabe K, Wada J, Ohkubo J, Nitta A, Ikezaki T, Takeuchi M, Handa A, Tanaka M, Murakami N, Kashii T, Kitazawa H.
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Journal Title
Eur J Hosp Pharm Sci Pract
Volume: 22
Pages: 171-175
Peer Reviewed
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[Presentation] 精神疾患患者における末梢血中SHATI/NAT8LのDNAメチル化率の低下2015
Author(s)
岩田美奈, 宇野恭介 ,宮崎杜夫, 袖山健吾, 山森英長, 藤本美智子, 安田由華, 橋本亮太, 宮本嘉明, 鍋島俊隆, 武田雅俊, 新田淳美
Organizer
第45回日本神経精神薬理学会年会
Place of Presentation
東京
Year and Date
2015-09-24 – 2015-09-26
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[Book] 脳212016
Author(s)
新田淳美、宇野恭介、鍋島俊隆、宮本嘉明
Total Pages
92
Publisher
金芳堂
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