2016 Fiscal Year Annual Research Report
RNA編集とマイクロRNA制御を考慮した高次エピジェネティック薬物代謝制御の解明
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15H04663
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
中島 美紀 金沢大学, 薬学系, 教授 (70266162)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 薬物応答性 / マイクロRNA / 個人差 / 転写後調節 / RNA編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
RNA編集の一種であるA-to-I RNA editing は遺伝子の発現および機能に影響を与え得る転写後調節であり、adenosine deaminase acting on RNA (ADAR) により触媒される。本研究は、薬物応答性の個人差や個人内変動におけるRNA編集の意義を明らかにすることを目的としている。 本年度はジヒドロ葉酸還元酵素 (DHFR) に着目して検討した。葉酸代謝の鍵分子であるDHFRの3’-非翻訳領域がADAR1によってRNA編集を受けることをダイレクトシークエンス解析により明らかにした。ヒト乳がん由来MCF-7細胞においてADAR1をノックダウンした際、DHFRの発現量が低下することを明らかにした。その分子機構は、編集を受けないRNAはmiR-25-3pやmiR-125a-3pの認識配列を保有することとなり、これらのmicroRNAによる発現抑制を受けるためであることを明らかにした。ADAR1をノックダウンすると、MCF-7細胞の生存率が低下し、メトトレキサートに対する感受性が増加することが示され、DHFRの発現低下に起因するものであることが示唆された。ヒト乳がん組織におけるADAR1発現量は、周囲の正常組織に比べて高値を示し、それに比例して、RNA編集の程度も正常組織よりがん組織で高いことが示された。 以上より、ADAR1はmicroRNA認識配列部位を編集することで、DHFRの発現量を正に制御しており、がん細胞の細胞増殖やメトトレキセートに対する耐性を促進させることを明らかにした。本研究成果はJ Biol Chem誌に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
医薬品の標的分子がRNA編集により転写後調節されていることを世界で初めて明らかにし、論文として発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトにおける薬物代謝に中心的な役割を担うシトクロムP450が、RNA編集により転写後調節を受ける可能性を明らかにする。
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Research Products
(6 results)