2015 Fiscal Year Annual Research Report
膜輸送体メタボロームによる炎症性腸肝疾患バイオマーカーの探索と発症機構の解明
Project/Area Number |
15H04664
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
加藤 将夫 金沢大学, 薬学系, 教授 (30251440)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 膜輸送体 / メタボローム / バイオマーカー / 炎症性疾患 / 薬物動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
種々の病態との関連が示唆される膜輸送体OCTN1の生体内基質を解明する目的で、OCTN1安定発現細胞株(HEK293/OCTN1)と、対照として空ベクター導入細胞(HEK293/mock)に、デキストラン硫酸誘発腸炎マウス小腸組織可溶化画分、アデニン誘発腎障害マウス腎組織可溶化画分および通常の培養血清を添加し、一定時間incubation後に細胞を洗い可溶化、除タンパクの後、LC-Orbitrapを用い細胞内に含まれる物質を網羅的に検出した。その結果、対照に比べOCTN1発現細胞で高いピークを示した化合物を同定した。本化合物はアミノ酸リシンの代謝経路上に存在する。さらに、多くの化合物を同定する目的で、LC-TOFMSを用いた実験系を新たに立ち上げ、網羅的な代謝物探索が可能となった。本実験系は学内にある測定機器を用いるため、今後の実験スピードの大幅な向上につながるものと考えている。一方、OCTN1と病態との関連を明らかとする目的で、octn1遺伝子欠損マウスと野生型マウスを用い、種々の病態モデルを作製したところ、OCTN1と肝線維化との関連を示唆するデータが得られた。線維化に働くコラーゲンは活性化星細胞で合成されることが知られるが、OCTN1はこの細胞に発現することがマウスの実験で示唆されたため、ヒト肝星細胞LX-2を入手し、OCTN1の機能的発現を検討した。その結果、LX-2細胞はOCTN1の典型的基質であるエルゴチオネインを細胞内に取り込み、その取り込みは濃度依存的であった。また、サイトカインを添加することでLX-2細胞を活性化させたところ、OCTN1の細胞内での局在変化が見られたことから、活性化とOCTN1との関係が示唆された。現在、遺伝子ノックダウン等の手法を用い、OCTN1の線維化に及ぼす役割について検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の特筆すべき成果として、(i)内因性基質と思われる物質の候補を同定できたこと、(ii)研究の効率を大幅にアップさせるLC-TOFMSの系を立ち上げることができたこと、(iii)いくつかの研究成果を論文化できたことが挙げられる。(i)については、本研究で提唱する膜輸送体メタボロームの妥当性を科学的にサポートする結果であり、さらなる研究の発展を示唆する。(ii)については、これまで片道2時間かかる他大学施設を利用していたのに対し、学内の測定機器が利用できるようになった点において、研究が極めてやりやすい環境となった。この点も、今後のさらなる研究の発展を示唆する。(iii)については、肝線維化に及ぼすOCTN1の役割について解明できたほか、OCTN1を介した内因性基質エルゴチオネイン取り込みによる神経新生や抗うつ作用など、本研究の基盤となる膜輸送体と病態との関係を科学的に証明することができた点において、本研究の妥当性を示唆するものであり、さらなる研究の発展が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
LC-TOFMSを用いた膜輸送体メタボロームが可能となり、実際に、OCTN1による輸送活性を示すと思われる多数の未知化合物のピークが検出できるようになった。したがって、今後の研究遂行における律速段階は、検出される多数のピークの中から意味のある物質ピークを効率よく選択的に割り出すこと、さらに、割り出された物質を効率よく同定することに移っている。前者については、種々の解析ソフトを用いることで研究効率を上げているところであるが、ピークの形状や実験結果の再現性など、最終的には研究者の目で確認することが必須であるため、これ以上の大幅なスピードアップは難しいものと考えている。一方、後者については、たんに公開されている化合物データベースを用いた検出や同定だけではなく、OCTN1の持つ基質特異性も考慮し構造を推定することや、誘導体化等の技術を使って部分構造を推定するなど、他のさまざまな手法を組み合わせながら同定していくことが必要と考えている。一方で本年度やこれまでの成果から、OCTN1の炎症性腸疾患、肝線維化、脳機能に及ぼす役割が解明されつつあることから、その詳細な役割の解明を目指して、他の病態モデル動物やヒト検体を使った解析も並行して実施する予定である。実際、炎症性腸疾患患者検体については、すでにOCTN1内因性基質とその代謝物の濃度を測定しつつあり、今後、その結果を解析する予定である。また、同定された代謝物の物質測定にあたっては、その標品の合成が必要となることがある。すでに、有機化学者との共同研究によっていくつかの物質の合成を進めており、今後も継続して行うことで物質定量を加速させ、バイオマーカー探索につなげる予定である。
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Research Products
(20 results)
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[Journal Article] Increased plasma concentrations of unbound SN-38, the active metabolite of irinotecan, in cancer patients with severe renal failure.2016
Author(s)
Fujita K, Masuo Y, Okumura H, Watanabe Y, Suzuki H, Sunakawa Y, Shimada K, Kawara K, Akiyama Y, Kitamura M, Kunishima M, Sasaki Y, Kato Y.
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Journal Title
Pharm Res
Volume: 33(2)
Pages: 269-282
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Localizatoin of xenobiotic transporter OCTN1/SLC22A4 in hepatic stellate cells and its protective role in liver fibrosis.2016
Author(s)
Tang Y, Masuo Y, Sakai Y, Wakayama T, Sugiura T, Harada R, Futatsugi A, Komura T, Nakamichi N, Sekiguchi H, Sutoh K, Usumi K, Iseki S, Kaneko S, Kato Y.
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Journal Title
J Pharm Sci
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] A mutation in SLC22A4 encoding an organic cation transporter expressed in the cochlea strial endothelium causes human recessive non-syndromic hearing loss DFNB60.2016
Author(s)
Ben Said M, Grati M, Ishimoto T, Zou B, Chakchouk I, Ma Q, Yao Q, Hammami B, Yan D, Mittal R, Nakamichi N, Ghorbel A, Neng L, Tekin M, Shi XR, Kato Y, Masmoudi S, Lu Z, Hmani M, Liu X.
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Journal Title
Human Genetics
Volume: 135(5)
Pages: 513-524
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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