2015 Fiscal Year Annual Research Report
HIV複製抑制因子の細胞性免疫増強作用に関する研究
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15H04737
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
俣野 哲朗 国立感染症研究所, エイズ研究センター, センター長 (00270653)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ウイルス / 微生物 / 免疫学 / 細胞傷害性Tリンパ球 / HLA / 抗原提示 |
Outline of Annual Research Achievements |
感染細胞で産生されるウイルス蛋白質の一部は分解され、そのペプチド断片がHLA分子と結合し細胞表面に提示されて細胞傷害性T細胞(CTL)の標的となりうる。このようなCTLへの抗原提示に対し、宿主因子との相互作用を介したウイルス蛋白質動態がどのように影響するかについては解析が進んでいない。そこで本研究は、子孫ウイルス産生だけでなく細胞性免疫に対する抗原提示という新しい視点を加えたウイルス複製サイクルの解明を目指し、特にHIV複製に抑制的に働くAPOBEC3G等の宿主抑制因子に焦点を絞り、抑制因子とHIV蛋白質との相互作用がCTLに対する抗原提示に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。 平成27年度には、主にAPOBEC3G発現細胞とそのノックダウン細胞を用いた実験により、APOBEC3GとVifの相互作用がVif由来エピトープ特異的CTLによる細胞傷害作用に及ぼす影響を解析した。CTL反応解析の精度を確保するため、研究代表者がこれまでのサル免疫不全ウイルス(SIV)感染実験で同定してきたMamu-A1*065:01拘束性SIV Gag241-249(SW9)エピトープを標的とするCTL反応解析系を主に利用した。その結果、SW9特異的CTLは、SIV Gag発現細胞と比較して、HIV VifのC末端にSW9エピトープを含む配列を連結したHivVifSW9発現細胞に対してより高い細胞傷害度を示した。一方、SW9特異的CTLは、HivVifSW9発現APOBEC3Gノックダウン細胞に対しては、高い細胞傷害度を示さなかった。したがって、Vif連結エピトープは、APOBEC3G依存性に効率よくCTL標的として提示されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Vif連結エピトープは、APOBEC3G発現細胞で効率よくCTL標的として提示され、その提示は、APOBEC3Gノックダウンで減少することを示唆する結果が得られた。本結果は、CTL標的エピトープの提示に宿主抑制因子が関与することを示すもので、学術的に斬新かつ重要な成果である。今後、当初の計画にしたがい、本結果の検証ならびに詳細な機序解析を推進する予定である
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Strategy for Future Research Activity |
今後、上記結果を検証するため、APOBEC3G結合能を有さないVif変異体に連結したSW9エピトープ発現細胞のSW9特異的CTLによる細胞傷害度を調べる。また、別のHLA-A*24拘束性Nefエピトープを用いた解析も行う。さらに、HIV複製過程でも同様の結果が得られるかどうかを確認する目的で、VifをHIVゲノムより発現させる系で検証を行う。一方、エピトープ提示効率を直接測定する手法の開発も検討する。
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Research Products
(8 results)