2015 Fiscal Year Annual Research Report
国際化時代の医学部海外選択実習: 実施課題と中長期的意義に関する国際共同研究
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15H04753
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
武田 裕子 順天堂大学, 医学部, 教授 (70302411)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀 浩樹 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40252366)
堀 芳枝 恵泉女学園大学, 人間社会学部, 准教授 (30386792)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 海外実習 / 医学生 / 互恵性 / 社会貢献 / アンケート調査 / グローバル人材 / コンピテンシー / 実習手引書 |
Outline of Annual Research Achievements |
毎年800名近くの日本の医学部生が海外選択実習を行っている。本研究では、途上国と先進国それぞれにおける海外実習の意義と課題を明らかにし、グローバル人材の要素である語学力・相互理解ならびに社会貢献意識の変化を探る。学生を派遣する医学部の準備教育から受け入れ先での実習プログラムまで、双方が共通の理解に基づき一貫性のある教育を効果的に提供できるように、汎用性の高い実習手引書作成を行う。さらに派遣元と受け入れ先の医学部間で互恵性のあるパートナーシップ確立に向けて何が必要かを検討する。 初年度は、まず、多くの高所得国から実習生を受け入れているフィリピン、タイ、タンザニアの医学部教員に聴き取りを行った。受け入れの利点として:(1)先進国の実習生と接することで学生が広い視点に立って考えられるようになる、(2)海外に自大学の存在が知られ直接・間接の支援につながる、(3)学生が、自分たちの教育がglobal standardに照らしてもより充実していることを海外の実習生から聞くと自信につながる。また、(4)社会的責任(social accountability)としての教育活動に海外の医学生が参加することで、将来その学生たちが医師として働く社会に貢献できる、が挙げられた。 次に、海外実習を経験した卒業生対象の質問票を開発した。まず過去の文献にあたり、患者の代弁者としての医師の役割に関する設問を設け、社会貢献に対する意識や態度を尋ねた。従属変数は、現在の職務・選択診療科ならびに診療地域とした。また、医学生の海外実習参加前後における意識や態度の変化をみる調査票を作成した。社会貢献意識については、対照として医学部1-6年生約600名に同様の調査を実施した。 実習手引書については、北米(タフツ大学、マギル大学)および英国キングス・カレッジ医学部の資料を参考に、実践例を多く含む包括的な構成とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題採択後、速やかに倫理審査委員会で承認を得て研究を開始している。学会発表などの機会に国内外の研究協力者と打ち合わせを行うことができた。電子メールやSkypeの利用により、海外の研究協力者とも円滑に打ち合わせができている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、「医学部海外実習の中長期的効果の評価・検討」として、昨年度開発した質問票を用いたアンケート調査を実施すると同時に、その際に募った協力者にインタビューを行う。また、『海外実習手引書(案)』を完成させ、手引書を用いた準備教育の実施とその評価を行う。さらに、国際共同研究者とともに、これまでの海外選択実習準備教育の経験を論文にまとめて発表する。 1.医学部海外実習の中長期的効果…(1)アンケート調査:①三重大学医学部卒業生、②筑波大学海外臨床実習経験者、③医学教育振興財団英国短期留経験者、④笹川記念保健協力財団フェローシップ修了者に、アンケート調査を行う。一部郵送法を用い、またインターネットを用いた回答も可能とする。(2)質的調査(インタビュー):上記実施の際に協力を依頼し了解を得られた回答者を訪問・またはスカイプによるインタビューを行う。半構造化面接とし、質問項目は事前に準備する。NVivoソフトウェアを用いたテープ起こし原稿の解析も並行して進める。 2.『海外実習手引書(案)』の作成…(1)『手引書(案)』作成:昨年度入手した、マギル大学、タフツ大学、キングス・カレッジの実習ガイドブック、ならびに学生を受け入れる側の途上国教員のインタビューに基づき、派遣元・受け入れ側双方の医学部教員に役立つ手引書を作成する。さらに上記大学の実践例をGood Practiceとして紹介する。(2)海外実習事前教育の実施:(1)の『手引書(案)』を用いて、三重大学ならびに佐久総合病院関連医療系学生サークルの学生を対象に、海外実習前の準備教育を実施する。実習前後でアンケート調査を行い、『手引書(案)』の改善点を探る。 3.国際学会発表…国際学会の企画に応募して、得られた知見を発信するワークショップを開催する。
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Research Products
(10 results)