2016 Fiscal Year Annual Research Report
脳虚血モデル細胞を用いた脳血管疾患の脳内病態解析:法医脳機能新法の開発
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15H04797
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
猩々 英紀 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (60284626)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脳虚血 / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
我国において、脳虚血を伴う脳血管疾患・傷害による死亡は死因の約12%を占めており、4大死因の一つである。従って、脳虚血の病態を精査し、死者の生前の状態を推定する事は法医学において重要である。一方、ミトコンドリは細胞の生と死の両面に関与しており、ミトコンドリアの形態はその機能を反映していると考えられている。しかしながら、これまでの法医診断ではミトコンドリアの生活反応に着目した解析は殆どない。そこで、本研究では脳虚血に伴うミトコンドリアの形態変化と脳機能との関係を調べ、その病態を解明する事でミトコンドリアの生活反応を指標とした新規法医脳機能診断法を開発する事を目指している。従って、生きている状態でのミトコンドリアの機能変化と形態変化を経時的に検討する必要がある。その後、生前と死後の相違を比較する事で、「ミトコンドリアの機能が死後のミトコンドリアの形態としてどのように保存されているのか」を検討する。そこで、当該年度は、高分解能蛍光顕微鏡DeltaVisionを用いた3次元画像解析により、虚血処理(Oxygen-glucose deprivation: OGD処理)後のミトコンドリアの機能及び形態を明らかにし、生理的条件下と比較した。 ・脳虚血に伴うミトコンドリアの機能変化 OGD処理後の神経細胞では、核、細胞体および樹状突起が委縮し、OGD処理時間依存的に生存率の低下、死亡率の増加を認めた。また、OGD処理時間依存的にミトコンドリア活性および呼吸活性の低下を認め、生理的条件下の細胞に比べ有為な細胞及びミトコンドリア機能の低下が示唆された。 ・脳虚血に伴うミトコンドリアの形態変化 生理的条件下のミトコンドリアでは融合と分裂を認め、比較的伸長状態を維持していた。一方、OGD処理後の神経細胞では、OGD処理時間依存的に伸長状態から断片化状態へと移行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、生理的条件下とOGD処理後のミトコンドリアの機能と形態について比較検討を実施しており、研究はほぼ計画通りに進展しているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の結果から、ミトコンドリアの形態は細胞及びミトコンドリアの機能の低下に伴って変化する事が示唆された。そこで、この形態変化とネクローシス或いはオートファジなどの細胞死との関係について検討する。さらに、ミトコンドリアの生活反応を指標とした新規法医脳機能診断法を開発するために、細胞固定標本を用いて、「ミトコンドリアの機能が死後のミトコンドリアの形態としてどのように保存されているのか」について検討する。なお、研究期間最終年度である平成29年度に、研究成果の一部を取りまとめ学会で発表し、国際誌へ投稿予定である。
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Research Products
(3 results)