2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H04849
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
谷澤 幸生 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00217142)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田部 勝也 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (00397994)
太田 康晴 山口大学, 医学部, 准教授 (60448280)
幡中 雅行 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (60572534)
秋山 優 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (90717547)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 糖尿病 / インスリン分泌 / 時計遺伝子 / 概日周期 / E4BP4 / DBP |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、生活習慣病と生体リズムとの関連が注目されており、膵β細胞の増殖やインスリン分泌能もコアな時計遺伝子であるBmal及びClockにより制御されていることが報告された(Marcheva B, Nature,2010)。今回、我々は糖代謝における時計遺伝子の役割を特にインスリン分泌、肝での糖代謝制御の観点から解析を進めている。 E4BP4を膵β細胞特異的に過剰発現するマウス(MIP-E4BP4マウス)を作製した。E4BP4は発現抑制性の転写因子で、過剰発現によりreciprocalに働く転写活性化因子であるDBPの作用を抑制する。このため、MIP-E4BP4マウスではこのことが膵β細胞特異的に引き起こされると期待される。すでに我々は、MIP-E4BP4マウスを作出し顕著なインスリン分泌不全と、耐糖能異常を観察している。膵灌流実験で、MIP-E4BP4マウスでは顕著なインスリン分泌低下と遅延が認められた。この効果には、transgeneのgene-dosage effectも明確であった。 さらにその分子メカニズムを単離ラ氏島での遺伝子発現の変化により検討した。インスリン遺伝子を含む、インスリンの産生、分泌にかかわる複数の分子は明らかに概日リズムをもって発現しており、MIP-E4BP4マウスではそのリズムは不明確になり、発現量は野生型の16%から45%に低下していた。それらの遺伝子がE4BP4/DBPで発現制御されることが抗E4BP4抗体を用いたChIP-seqにより確認されつつある。 肝臓での代謝における時計遺伝子の役割を検討するために、Alb-E4BP4トランスジェニックマウスを作出し、表現型の解析を進めている。Alb-E4BP4マウスでは随時血糖が高い傾向にあり、高脂肪食投与後では明らかな耐糖能異常が認められた。さらに表現型の詳細な解析を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに膵ランゲルハンス氏島β細胞でE4BP4を特異的に発現するトランスジェニックマウスは2系統作成済みで、表現型の解析も順調に進んでいる。インスリン分泌不全による耐糖能異常が観察され、遺伝子発現の側面からその分子機構を明らかにしつつある。E4BP4/DBPの標的遺伝子も同定し、さらには、RNA seqによる網羅的解析に着手している。 また、β細胞の細胞内代謝の変化にも着目し、インスリン分泌制御の要となるATP/ADP比が変化しており、このことがブドウ糖応答性のインスリン分泌不全の一因とも考えられる。 肝での糖代謝における時計遺伝子の役割の解析についても、Alb-E4BP4トランスジェニックマウスを既に2系統作出し、表現型の解析に着手している。これまでに、肝細胞特異的E4BP4トランスジェニックマウスでは随時血糖が高い傾向にあることを観察し、高脂肪食負荷後では耐糖能異常が顕在化する。これが肝でのインスリン抵抗性に起因することを示唆するデータも得つつある。 肝においては同時に、E4BP4を急激に過剰発現させるアデノウイルスを用いた実験系も同時並行で進めており、既に必要なアデノウイルスを作成している。E4BP4の急性の強制発現では、トランスジェニックマウスとは異なる強い表現型を得ており、解析中である。 このように、計画された研究はほぼ計画通り順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
時計遺伝子による膵β細胞からのインスリン分泌調節の解明については、既に進めているE4BP4トランスジェニックマウスの解析をさらに続行する。単離ラ氏島のRNAシークエンシングにより、遺伝子発現の変化を網羅的に解析し、影響を受けるパスウェイを同定して行く。既に細胞内ATP/ADP比に変化が生じていることを観察しているので、その点にも着目し、特に解糖系、TCAサイクル、ミトコンドリア機能などに焦点を当てて分子レベルでの解析を進めて行く予定である。 肝での糖代謝への影響については、Albmin-E4BP4トランスジェニックマウス、及び、E4BP4過剰発現アデノウイルスを用いて、慢性効果、急性効果の両面から解析を進めて行く。先ず、両者の表現型の詳細な解析の後に、分子レベルでの解析を進める予定である。 もう一つのインスリン感受性組織である脂肪組織については、脂肪組織に浸潤する炎症細胞とインスリン感受性の関係が注目されている。今回は、マクロファージ(単球)での時計遺伝子に着目して研究を進めつつある。基礎的研究として、マクロファージでの遺伝子発現の概日リズムについて検討する。さらに、糖尿病モデルマウス等で、その概日リズムの変調の有無を解析する。さらに、マクロファージ特異的E4BP4トランスジェニックマウスを作出し、表現型の解析から進めて行く。 これらの計画には既に着手しており、順調な進行が期待できる。
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