2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H04888
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
佐野 栄紀 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (80273621)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高石 樹朗 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 助教 (10303223)
中島 喜美子 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 准教授 (20403892)
寺石 美香 高知大学, 医学部附属病院, 助教 (40437736)
大湖 健太郎 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 助教 (90595274)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 膠原病 / トール様受容体 / 紫外線照射 / 自然免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、トール様受容体(TLR)7アゴニストであるイミキモド(IMQ)やレジキモド(R848)の外用によって野生型マウスにループス様自己免疫疾患を誘導することを発見し、報告した(Arthritis Rheumatol, 2014,66:694)。本研究の成果は、経皮的ルートからのTLR7刺激によって発症する新規ループス様自己免疫疾患モデルとしてのみならず、皮膚からのTLR7を介するシグナルとSLEについての病因論的関連性を示唆する画期的な発見である。一般にSLEやその他自己炎症性症候群において、紫外線曝露が発症の環境要因となり、病状を悪化させることも知られている。TLR7径路はplasmacytoid dendritic cell (pDCs)依存性であり、皮膚からの刺激が効率的であることを示したが、同時に皮膚、とくに表皮を標的とする紫外線刺激がこの径路に作用する可能性を考えた。そこで、我々はBALB/cマウス耳介皮膚にR848 50μg週3回外用後にUVB200mJ/cm2照射、4週後の血清中抗ds-DNA抗体を測定した。R848外用およびUVB照射群において、有意な抗ds-DNA抗体産生の増加を認めた。このとき、自己抗体レベルに伴って、腎臓糸球体への免疫複合体沈着の程度も相関が認められている。BALB/cマウス同様、C57BL/6マウスにおいてもR848外用群に比べUVB照射を加える事により、より早期より抗ds-DNA抗体および抗Sm抗体の出現を認めた。このように、経皮的TLR7刺激による自己免疫疾患は紫外線照射により発症が促進されることが明らかである。この研究においては、UVB照射による表皮へのシグナルからTLR7依存性の全身性ループス様症状を増悪させる病態解明を主な目的とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①HMBG1はUVB照射によって障害された表皮細胞より分泌され、自然免疫の増悪driverとしてあるいはalarminとして作用することが知られている。この関与を検討するため表皮特異的HMBG1ノックアウトマウスを作製する目的でfloxedマウスの入手を試みたが、供与されなかった。 ②そこで、HMBG1の下流シグナルとして報告されているMyD88を標的とした解析を行った。表皮特異的にMyD88 KOマウスを作製するために、MyD88 floxed マウスを購入し、K5-Creマウスと交配し、解析を行った。しかし、MyD88-/-, MyD88+/-の2群間で、R848外用2~4週後の脾腫の程度、脾細胞数、構成細胞群、血清抗核抗体価、抗dsDNA抗体価、抗Sm抗体価に差が認められなかった。以上の結果、少なくともMyD88がTLR7リガンド刺激依存的な自己免疫疾患発症に関与していず、また紫外線照射による促進効果にも関与がないことが明らかになった。 ③HMBG1の阻害薬であるGlycyrrhizin(GC)を投与して、R848外用およびUVB照射を行い、投与による影響を検討した。C57/BL6マウスを用いて、GC腹腔内投与することでHMBG1を阻害して、UVB照射をおこなったが、無処理群にてR848外用による全身炎症がUVB照射で増強されず、陽性対照が確立できなかった。このため、GC投与の影響を判定できなかった。 ④TLR7アゴニストimiquimod(IMQ)クリームの長期外用によって誘導できる乾癬様皮膚炎とループス様全身炎症のtime courseを詳細に検討した。IMQクリームによる皮膚炎は1週目をピークとしてその後減弱に転じる一方、脾腫、脾細胞増加、骨髄系細胞の出現、抗核抗体など自己免疫性炎症は4週以降に出現、8週までさらに増悪する傾向を認めた。このように、IMQクリーム外用による皮膚症状とループス様症状の出現には誘導の時間差があることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
TLR7シグナルの経皮的径路で誘導されるループス様症状における紫外線照射の影響を検討するうえで、上記③で述べたように、R848外用による自己免疫性炎症誘導の再現性にやや問題なしとせず、その理由は試薬の劣化を含む品質コントロールおよび、マウスの個体差などのノイズによるものと考えた。このため、我々は連携協力者である東大医科研の三宅博士よりUnc93b1D34A/D34A ノックインマウス(D34Aマウス)を得て、新たな系で解析することとした。Unc93B1はendosome内でのTLR9とTLR7のバランスを制御している。Unc93B1はTLR9により結合することにより優先して輸送することで、TLR7の活性を常に抑制している。Unc93B1のD34に変異をいれることでTLR9の結合が解離しやすくなり、相対的にTLR7の輸送が優先される。このため、このD34A変異をもつマウスUnc93B1D34マウスはspontaneousに脾腫など全身性自己炎症を起こす (Fukui, et al.Immunity 35, 69, 2011)。Unc93B1D34Aマウスは自己免疫性炎症を自然発症し (Immunity, 2011, 35;69)、生後30週において致死率が約60%である。このとき、TLR9KOバックグランドにしても致死率に変化がないが、TLR7KOにおいては発症せず、生存率に低下が認められなくなる。これはUnc93B1D34A変異がTLR7を介した全身性自己免疫性を誘導する事実を証明している。すなわち、我々の開発したTLR7アゴニスト外用系と同様、D34Aマウスにおいては内因性TLR7有意なシグナルによるループス様自己免疫発症マウスと考える。このマウスを使用することによりTLR7アゴニスト外用で認めたノイズを減じることができ、より再現性の高い解析が期待できる。このD34Aマウスを導入し、UVB照射をおこない、症状の早期発現、あるいは重症化が起きるかなどを検討する予定である。
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Research Products
(3 results)