2017 Fiscal Year Annual Research Report
中枢神経系機能性疾患における三者間シナプス伝達機能障害仮説の構築
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15H04892
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
岡田 元宏 三重大学, 医学系研究科, 教授 (10281916)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉浦 嘉泰 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (00315665)
大野 行弘 大阪薬科大学, 薬学部, 准教授 (00432534)
植田 勇人 三重大学, 医学系研究科, 客員教授 (70244192)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 機能性疾患 / グリア |
Outline of Annual Research Achievements |
生後0~1日のラット皮質からアストロサイトを分離・精製培養(2週間)し、純度95%以上の培養アストロサイトを精製した。精製された培養アストロサイトを人工脳脊髄液に移し、人工脳脊髄液内に遊離された伝達物質を、超高速液体クロマトグラフ(蛍光検出器あるいは質量分析装置)を用いて定量した。遊離された化学物質の多くは、電位依存性ナトリウムチャネル非感受性であった。しかし、一部の物質は、SNAREタンパク質感受性であった。ナトリウムチャネル非感受性+ SNAREタンパク質感受性の物質の中で、アストロサイトのアコニターゼ阻害薬であるフルオロクエン酸によって遊離が減少した物質としては、 1)ヌクレオチド誘導体:ATP・ADP・AMP・アデノシン 2)トリプトファン誘導体:キヌレン酸・キサンツレン酸・シンナバリン酸 3)アミノ酸:L-グルタミン酸・D-セリン 以上、9種の化学伝達物質が、グリア伝達物質として確定された。 サイトカインの上記グリア伝達物質遊離に対する効果を検討したが、グリア伝達物質遊離が増加しており、少なくともAMPA型グルタミン酸受容体が関与する可能性が指摘可能であった。また、このサイトカインによるグリア伝達物質遊離増加は、急性投与と慢性投与で特徴が異なることから、多様なサイトカインの作用機序を示唆する物であった。抗精神病薬・抗うつ薬・抗てんかん薬・認知症治療薬のグリア伝達に対する効果を検討した。病態と病態生理で予想外の結果が一部で得られた。しかし、この過程を解析した結果、この想定外の結は、直接的ではなく複数の分子の相互作用によって誘導された情報伝達機構の機能変化をとらえたものであった。神経とグリアでは、この分子間相互作用がことなく機序で構成されていることが明らかになりつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
グリア伝達物質の探索と、グリア細胞の開口分泌機構解析は当初の計画通りに進展している。しかし、抗精神病薬・抗うつ薬・抗てんかん薬・認知症治療薬のグリア伝達物質遊離に対する効果の検討が当初の予想とは異なる結果が明らかとなり、この機構解析に多くの実験を要する結果となり、当初の予定と比べ、進展が遅れている。完了には更に時間を要している。各種薬剤のグリア伝達物質遊離に対する効果の詳細は検討を進めることで対応する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
実験手技的には確立しており、進展の遅れとなっている、神経とグリアにおける分子間相互作用の異なる影響の機構解明自体が、研究計画以上の意義を持つ可能性もあり、今後も継続する方針である
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