2016 Fiscal Year Annual Research Report
DNA修復と細胞周期進行制御との連携経路による放射線感受性の制御
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15H04902
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮川 清 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (40200133)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 放射線治療生物学 / 放射線感受性 |
Outline of Annual Research Achievements |
放射線感受性は、細胞周期によって大きく変化するために、放射線治療の抵抗性を克服するために、その機序を解明することは極めて重要である。中でもG1期においては、その機序の解明が遅れているために、この時期のDNA修復と細胞周期進行機構との関係に着目して研究を行っている。 相同組換えによってDNA二重鎖切断を修復するタンパク質であるRad54Bは、cyclin D1の発現を誘導することによって、G1期の進行を促進することが判明していることから、Rad54Bのcyclin D1発現調節の分子機序について解析した。 G1期で発現が誘導されるcyclin D1の転写因子の一つとしてc-Junが存在するが、Rad54Bを正常上皮細胞でノックダウンすると、c-Junのタンパク質の量的な低下が観察された。そこで、タンパク質分解阻害剤を加えて同じ実験をしたところ、c-Junタンパク質の量の低下は回復した。この結果から、Rad54Bはc-Junタンパク質の分解機構を抑制していることが想定された。 次に、c-Junタンパク質を分解する分子として、CUL4Aに着目した。このタンパク質は、NEDD8が付加されることによって活性化され、標的タンパク質を分解する。そこで、Rad54BのCUL4Aに対する影響を検討したところ、Rad54Bのノックダウンによって、NEDD8が付加されたCUL4Aの増加が観察された。この結果は、Rad54Bが、CUL4AにNEDD8が付加されないような役割を果たしていることを示すものである。さらに、Rad54BとCUL4Aを細胞内で過剰発現すると、これら2つのタンパク質は複合体を形成することが判明した。 このように、Rad54Bは、タンパク質分解経路へ直接的に作用することによって、cyclin D1の発現レベルを維持してG1期進行を促進することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DNA修復を行うタンパク質Rad54Bが、タンパク質の分解に関わる経路に影響を及ぼすことによって、cyclin D1の発現を誘導するc-Junの機能を維持することが判明し、放射線感受性が大きく変化するG1期において、その分子機序を解明するために重要な情報伝達経路の一部が明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
G1期の進行の中心的役割を果たすCyclin D/Cdk4/6とその上流および下流に存在する情報伝達経路を解明することによって、この時期に大きく変動する放射線感受性がどのように制御されているのかの理解が深まり、放射線治療抵抗性を克服するための新しい方法の提案に結びつく可能性がある。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Extremotolerant tardigrade genome and improved radiotolerance of human cultured cells by tardigrade-unique protein2016
Author(s)
Takuma Hashimoto, Daiki D. Horikawa, Yuki Saito, Hirokazu Kuwahara, Hiroko Kozuka-Hata, Tadasu Shin-I, Yohei Minakuchi, Kazuko Ohishi, Ayuko Motoyama, Tomoyuki Aizu, Atsushi Enomoto, Koyuki Kondo, Sae Tanaka, Yuichiro Hara, Shigeyuki Koshikawa, Hiroshi Sagara, Toru Miura, Kiyoshi Miyagawa, Takekazu Kunieda et at.
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 7
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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