2016 Fiscal Year Annual Research Report
血管浮腫の観点からみた羊水塞栓症の診断、治療、予知・予防に関する研究
Project/Area Number |
15H04983
|
Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
金山 尚裕 浜松医科大学, 医学部, 理事 (70204550)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷口 千津子 浜松医科大学, 医学部附属病院, 診療助教 (20397425)
安立 匡志 浜松医科大学, 医学部附属病院, 診療助教 (40749446)
田村 直顕 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助教 (90402370)
内田 季之 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (90570234)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 羊水塞栓症 / 血管浮腫 / 子宮弛緩症 / フィブリノーゲン / C1インヒビター / DIC |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までと同様、全国から送られた羊水塞栓症の臨床情報、血清・血漿、子宮・肺組織の解析を行っている。 1)羊水塞栓症の子宮の臨床的組織学的所見:昨年度と同様羊水塞栓症の子宮は1kg程度と重かった。組織所見として好中球、マクロファージといった炎症細胞が浸潤しブラジキニンB1Rの発現が強く、腫増悪への関与が示唆された。子宮収縮関連タンパク質(オキシトシン受容体、コネキシン43)は羊水塞栓症で両者の発現が著しく低下していた。 2)子宮型羊水塞栓症の早期診断基準:羊水塞栓症の血液凝固異常として分娩後早期に出血量に見合わないDICを発症する。臨床的に腫大し軟らかい子宮が特徴であり、①子宮底高が臍上2指以上(臍上3~4cm以上)、②子宮筋層が非常に軟らかい、③フィブリノーゲン値が150mg/dL以下という項目を子宮型羊水塞栓症発症時の臨床診断(案)として日本産科婦人科学会周産期委員会に提出した。 3)DICに関する検討:子宮組織に好中球が浸潤していることから好中球エラスターゼに着目すると、羊水塞栓症例ではエラスターゼによるフィブリン分解産物が上昇している症例があり、線溶亢進にかかわる可能性がある。一方で羊水そのものが血液凝固に及ぼす作用をROTEMで検討した。ROTEMは全血を使用してその粘稠度の変化を測定できる。羊水を添加すると血液凝固は促進したが、組織因子の存在下では血餅はもろく、線溶反応も早期から現れた。特殊な条件下では羊水により溶解されやすい血餅になる可能性が示された。 4)C1インヒビターを用いた羊水塞栓症の新規治療法の開発:多施設共同研究として現在14施設が参加している。臨床的羊水塞栓症例に対するC1インヒビター使用例は9症例に使用された。9例中6例に子宮収縮の著明な改善を認め、有害事象もなく良好な転機をたどっている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の研究実施計画の内容通り、羊水塞栓症発症時の臨床診断基準を案として提出できた。子宮組織においてブラジキニンの関与を示すことができた。C1インヒビターを治療として使用する多施設共同研究において、参加施設、使用症例が徐々に増えてきている。DICに関しても今後の検討項目として好中球エラスターゼの関与、羊水の凝固線溶系への修飾機構を挙げることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
羊水塞栓症の子宮組織に関して炎症細胞が子宮頸部~体部にどのように浸潤していくか各部分がそろっている子宮組織で検討する。DICに関しては線溶亢進状態を評価するPIC(プラスミン)とともにエラスターゼXDP(好中球エラスターゼ)を血液で測定し、その関与を明らかにする。心肺停止をきたした羊水塞栓症例の病態を低酸素の観点から解析する。C1インヒビターの有効性を証明するためにひきつづき症例を蓄積し、15-20例程度を目指す。
|