2015 Fiscal Year Annual Research Report
カロリー制限研究からの知見を応用した唾液分泌障害に対する新規治療基盤の確立
Project/Area Number |
15H05020
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Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
斎藤 一郎 鶴見大学, 歯学部, 教授 (60147634)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梁 洪淵 鶴見大学, 歯学部, 講師 (10298268)
内田 仁司 鶴見大学, 歯学部, 助教 (20736996)
葉阪 彩加 鶴見大学, 歯学部, 学部助手 (30749841)
美島 健二 昭和大学, 歯学部, 教授 (50275343)
井上 裕子 日本薬科大学, 薬学部, 准教授 (50367306)
中山 亮子 鶴見大学, 歯学部, 学部助手 (50749843)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | カロリー制限 / 唾液分泌 / 炎症性サイトカイン / 網羅的解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
カロリー制限は、疾患のリスクを低減することで寿命を延長することが報告されている。一方、唾液分泌能の低下に伴う口腔乾燥症は加齢に伴い認められるが、これらの原因は不明であり、このことから今年度はカロリー制限が唾液分泌能に与える影響について検討した。12ヶ月齢のC57BL/6雄マウスを用いて、食餌自由摂取群と35%カロリー制限摂取群に分けて6ヶ月間飼育した。食餌制限3ヶ月、6ヶ月後にそれぞれの群における唾液分泌量を測定した。6ヶ月後の実験終了時にマウスから唾液腺を摘出し、組織学的検討により炎症性細胞浸潤の程度を検証し、real-time PCR法およびDNAマイクロアレイ法により遺伝子発現の検討を行った。食餌制限3ヶ月後から体重減少が認められた。唾液分泌量は自由摂取群では加齢に伴い減少する傾向にあったが、食餌制限群では実験開始の12ヶ月齢時と比べて増加し、自由摂取群と比べて有意に高い分泌量が認められた。また、食餌制限時に認められた唾液分泌量は若齢マウス(7週齢)と同程度であった。実験終了後の唾液腺につて組織学的検討を行ったところ、自由摂取群の高齢マウスでは唾液腺局所へのリンパ球浸潤が認められたが、食餌制限群では顕著な唾液浸潤像は認められなかった。同組織で遺伝子発現の検討を行った結果、食餌制限群ではSirt1や抗酸化酵素の発現増強が認められる一方、炎症性サイトカインの遺伝子発現の減少が認められた。さらにDNAマイクロアレイ解析を行った結果、CR群においてアミノ酸代謝、炎症関連因子に変動が認められた。このことから、カロリー制限による加齢に伴う唾液分泌能低下の改善効果はSirt1の発現による抗酸化作用、NFkBの転写抑制による炎症性サイトカインの発現抑制によるものの他、アミノ酸代謝や免疫応答に関わる複数の因子が関わっている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
唾液腺の機能を評価するマウスの実験系をいくつか本研究課題では計画していたが、これらを同時に遂行するには多くの労力が必要であることが判明した。このことから期待通りの効果が得られなかった場合には、これらの実験系の中から効果の高い実験系を選択することで研究計画の遂行を可能にする予定である。加えて、計画通りに進まない事態を回避するために予備的検討を既に実施し良好な結果が得られている実験系を優先し、想定外の成果や用いる試薬等の不備に影響されない万全な研究体制を整えた上で本研究課題を遂行したい。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に行った、カロリー制限時の発現遺伝子の網羅的な解析から現在までに得られた結果から、非必須アミノ酸であるセリンの合成経路に関連する遺伝子の発現が検出されている。セリンは抗酸化活性を有し神経伝達物質の活性化や脳へのブドウ糖の取り込みにも作用することが知られていることから、カロリー制限によりセリンの生合成が亢進し種々の機序を介して唾液分泌が促進した可能性が考えられる。セリンを用いた投与実験では予防効果モデルとして放射線照射マウスでは2週間前から照射後4 週間まで、治療効果モデルでは放射線照射マウスも同様に4週間自由摂取させ、唾液分泌能量の評価を今後行う予定である。 加えて、parotid secretory protein (PSP)プロモーター下流にGancicrovir (GSV)により唾液腺特異的に細胞死を誘導するHSV-TK を組み込んだコンストラクトを構築し、Lama-HSV-tk マウスに、持続的にGSV を投与することで唾液腺の障害が誘導できる実験系を確立する。さらに、NOD マウスの唾液腺細胞を用いCR またはセリン投与により自己抗原の発現に影響を与えるか否かを検討するために自己反応性リンパ球と共培養(クロミウム遊離試験)を行う。唾液腺単離細胞を調製し、51Cr を細胞内に取り込ませ96-well にNOD マウスから単離した唾液腺細胞を入れ、NOD 唾液腺局所または末梢血から得たリンパ球を共培養し細胞障害活性の測定を行う予定である。
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Research Products
(2 results)