2016 Fiscal Year Annual Research Report
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15H05058
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Research Institution | Nippon Sport Science University |
Principal Investigator |
小野塚 実 日本体育大学, 保健医療学部, 教授 (90084780)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保 金弥 星城大学, リハビリテーション学部, 教授 (00329492)
笹栗 健一 自治医科大学, 医学部, 講師 (10235286)
山本 利春 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 准教授 (50111901)
高橋 徹 福岡女子大学, 人間環境学研究科, 准教授 (80324292)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 認知症 / 口腔環境 / 海馬萎縮 / MMSE |
Outline of Annual Research Achievements |
自身の歯を失った後、義歯などを使わずそのままにしている高齢者は、歯が20本以上残っている人に比べ、認知症の発症リスクが約2倍高いという、我々の疫学的な先行研究結果が神経科学的に捉えた研究結果と符合するかを検索してきた。本研究では、認知症のトリガーは海馬萎縮委であるという神経科学的事実に基づけば、義歯装着などの未処置の人は海馬萎縮が顕著であるはずであるという仮説を実証するために、3次元画像補正システムをVSRADとmini-mental status examination (MMSE)法を併用して研究を遂行した。 本研究では(2年目)、65歳以上で認知症の症状を呈していない健常高齢者を被験者(初年度に用いた被験者)として、口腔環境調査により、3グループ{残存歯数20本以上(グループ1)、20本以下の残存歯数で歯科処置をしていない(グループ2)、義歯などの処置をしている(グループ3)}において、各グループ間での海馬萎縮の進展とMMSE検査結果の悪化に相違が生じるか否かを調査した。 その結果、平成28年度では、以下の成績を得た。(1)グループ1、グループ2、グループ3において、海馬萎縮の度合いを計測したところ、見かけ上ではグループ1が最も萎縮が大きい傾向を示したが、統計的には3グループ間で有意さが認められなかった。(2)海馬萎縮の大きかった被験者にインタビューしたとき、高齢になってから胃瘻等で口から食物を摂取できなかった経験があると回答した者が約70%存在した。(3)MMSEの結果も、海馬萎縮とほぼ同様の傾向がみられた。 従って、認知症の発生リスクは残存歯数いうより、むしろ口から食事が健全に摂取できているかに起因している可能性が高いことが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度では、グループ1、グループ2及びグループ3において、グループ1の海馬萎縮が最も大きかったと同時に、MMSEの検査成績の低下が見られた。しかし、同一被験者の1年後の変化を調べてみると、両者ともグループ1が悪化していると言いがたい結果が得られた。さらに、認知症に及ぼす口腔環境の影響は、健全に口から食事を摂取しているかどうかがキーポイントになる可能性が認められた。これは、きわめて重要な事実で、臨床の現場において高齢者の栄養摂取を胃瘻や点滴に委ねた場合、認知症に陥る例が頻発していることを裏付けているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究成果が、臨床で見られる事実を裏付けられる可能性が示唆されたので、最終年度(3年度以降)も初期に計画したスケジュールで研究を展開する方策である。
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Remarks |
本研究では、一般健常高齢者において、核磁気共鳴映像法(MRI)とMMSEを適用し、加齢に伴い最も早期に萎縮が起こり認知症の脳内トリガー部位である海馬の萎縮とMMSE検査の成績に及ぼす口腔環境(残存歯牙数、義歯装着など)の影響を解明することを目指している
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Research Products
(2 results)