2016 Fiscal Year Annual Research Report
混合病棟における周産期の安全と質保証を担保するための看護人員配置に関する研究
Project/Area Number |
15H05085
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
齋藤 いずみ 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (10195977)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西岡 笑子 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, その他, 教授 (70550797)
岩崎 三佳 神戸大学, 保健学研究科, 助教 (70584176)
山本 真由美 札幌市立大学, 看護学部, 講師 (70597137)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 助産学 / 助産師 / 配置 / 混合病棟 / 安全と質保障 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的である産科を含む混合病棟の安全と質保障のために、産科を含む混合病棟において分娩期の看護行為と看護時間を測定し、特徴を明らかにする。そこで、日本の分娩取扱い病院で、約8割を占めている産科混合病棟における、助産師と看護師による分娩期の看護時間と看護行為の特徴を明らかにし、助産師と看護師が協働する分娩期看護が、安全性の向上に寄与することを明らかにする。 対象と方法 正期産経腟分娩の事例を対象とした。産婦の入院から分娩後2時間値の測定終了までを分娩期とし、調査員がマンツーマン・タイムスタディ法を用いて産婦と新生児に関わった全ての看護者の看護時間と看護行為を測定した。 結果 調査期間の14日間に10例(初産婦4名、経産婦6名)の分娩があった。分娩期の平均経過時間は786.1分で、1組の母児に対して分娩期に関与した平均延べ人数は助産師が14.5名、看護師は5.1名、提供した平均看護時間は助産師が493.8分、看護師が68.8分であった。観察された看護行為26項目のうち看護時間の上位3項目は、助産師では助産診断(産婦の観察)・看護記録・直接分娩介助、看護師では新生児介助・間接分娩介助・(診療、処置の)準備・後片付けであった。助産師と看護師の看護時間および看護行為は、事例の個別性および分娩進行状態に対応して変動がみられた。入院から子宮口全開大に至るまでの時間に看護者間の連絡回数が集中しており、情報交換や業務調整が行われていた。 結論 分娩期に観察された看護行為から、助産師と看護師はそれぞれの専門性に応じた役割分担をしていることが実証された。産科混合病棟では分娩第2期までの経過時間に看護者間の連絡を密にして、他科患者への業務調整や分娩準備を行うことが重要である。それにより、分娩第2期・第3期に母児に対し集中して看護することが可能になり、分娩期の安全確保につながることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
詳細の分析にて、下記の内容を明らかにした。分娩第1期から第4期の看護において、看護師の関与しない事例はなかったことを明らかにした。助産師と看護師の協同を考えるうえで、この事実の証明は重要である。10事例の平均経過時間は786.1±847.2分で、平均看護時間は助産師が493.8±300.2分、看護師が68.8±63.7分であった。10事例の平均看護時間は助産師と看護師で有意(p<0.01)な差があり、助産師のほうが多かった。初産婦と経産婦への看護時間別でも同様に有意な差があった。分娩期4区分の平均経過時間は、A期が634.2±834.1分、B期が20.1±15.2分、C期が7.3±3.6分、D期が124.5±3.9分であり、助産師および看護師の4区分別平均看護時間は、A期:284.4±245.8分、18.7±13.2分、B期:42.3±32.3分、7.8±11.0分、C期:20.9±13.5分、5.3±4.9分、D期:146.2±58.2分、37.0±45.1分であった。経過時間と看護時間の間には、A・B・C期には有意な相関(p<0.05)があり、D期には相関関係がみられなかった。 測定された看護行為26項目のうちで、合計看護時間の多かった上位5項目は、助産師では助産診断、看護記録、直接分娩介助、新生児介助、申し送りの順であり、看護師では新生児介助、間接分娩介助、(診療、処置の)準備・後片付け、申し送り、直接分娩介助の順であった。助産診断の実際は産婦の観察が主で、申し送りの実際は看護者間の連絡・打ち合わせが主であった。上位看護行為に対する助産師・看護師の看護時間を分娩期4区分ごとに示した。 上記のように分娩時の看護時間と内容の詳細が明らかになることで、分娩時の安全性と質をどのように確立していくかという研究目的が順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
分娩期の看護時間は助産師のほうが看護師より有意に多いが、看護師の関与は全事例に認められ、協働体制がとられていた。看護行為について、助産師は「看護診断」「看護記録」「直接分娩介助」、看護師は「新生児介助」「間接分娩介助」「(診療、処置の)準備・後片付け」を主に担当しており、職種別の専門性に応じた役割分担で互いに補完していた。入院から子宮口全開大までの時期に、看護者間の連絡・打ち合わせが頻回にあり、分娩第2期以降に備えて業務調整を行っていた。計画的な場合を除き、産婦の入院や分娩に対して看護者は限られた人数で臨時に増えた業務量に対処しなければならない。分娩経過時間は個人差が大きく、産科混合病棟では他科患者の看護が重なるため、助産師は状況判断し、分娩経過の情報を看護師に適切に発信することが大切である。 今後は、上記のこれまで明らかになった事実を基盤に、この事象の生じている原因や周辺状況との関連を明らかにしていくことが課題である。また、産科混合病棟の中でも、上記とは異なる病院における産科混合病棟の調査を加えることを検討中である。複数個所における、産科混合病棟における調査を現在準備中であり、組織固有の特徴ではなく、産科混合病棟の特徴であることを詳細に実証できる部分を強化することを準備している。解析方法において現在は、単回帰分析にとどまるが、膨大な実測データを今後は、複雑な統計解析を用いて、混合病棟の特徴を導き出す計画である。
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