2015 Fiscal Year Annual Research Report
在来知の格差・近代的変容・革新―タンザニアにおける薬草資源と諸アクターの役割
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15H05139
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
阪本 公美子 宇都宮大学, 国際学部, 准教授 (60333134)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八塚 春名 日本大学, 国際関係学部, 助教 (40596441)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | タンザニア / 薬用植物 / 伝統医 / 呪医 / 薬草 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.薬用資源とその活用に関する基礎的調査として、タンザニア中部ドドマ、南東部リンディ、ザンジバル、北東部タンガにおいて、薬草医・呪医・住民・NGO関係者をインフォーマントとして200種ほどの薬草の観察(木本・草本植物の画像記録・採集)、生育場所の地理的情報取得(緯度・経度・標高)、聞き取り(名称・使用個所・方法、効用など)を行った。その方法については、研究会を2回開催し、研究分担者・協力者と調整した。採集した薬用植物については、ダルエスサラーム大学などの専門家ムバゴ氏や、ルフォ博士が同定し、それらをもとに記録を整理した。 2.タンザニア、リンディ州ならびにドドマ州において住民間の植物の薬用利用の個人差に関する調査を開始した。リンディ州ルタンバ村およびドドマ州マジェレコ村などでは、植物の認識そのもの、ならびに利用方法に関する共通性ならびに差異が見受けられた。また、ドドマ州ファルクワ村では、聞き取りのなかで明らかになったこととして、薬用利用と同時に、調査対象とする人びとの病にまつわる原因の捉え方や対処の方法も、非常にユニークであることを再確認し、今後はこうした病気観と薬草利用を同時に調査を進める。 3.各地の調査において、呪医・薬草医・住民約20名から、彼ら・彼女らのおいたち、薬用植物を知るようになった経緯、その知識の活用、活動、社会的役割について聞き取り調査した。その中では、薬用植物に関する知識の秘密性と対価に関する温度差があり、それらを敏感に意識しながら調査する必要性を感じた。 また、在来知を活用したNGO、INADESなどから聞き取りを行い、その社会的役割について把握した。さらに、ムヒンビリ大学の伝統医機関を複数回訪問し、今後の協力体制を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記に記載通り、初年度に予定していた基礎的調査は順調にすすめることができた。 また、比較研究も2村において開始し、順調に初年度の研究を進展できた。 さらに、ムヒンビリ大学の伝統医機関やNGOからの聞き取りに加え、今後の協力関係も確立できた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.薬用資源(主に木本および草本などの薬用植物)とその活用に関して引き続き住民や有識者から聞き取り、観察・採取を行うとともに、確認も行う。地域的には、本年度ダルエスサラームの調査を開始し、ザンジバル、ドドマの調査を継続する。成分分析については予算的制約もあるため、主に先行研究を参照し、タンザニアにおける権威であるムヒンビリ大学の伝統医機関と協力関係を活用する。 2.前年度の成果、先行研究を参照し、地域内・地域間比較研究を行う。 3.必要に応じて薬草医・NGO等のキーパーソンの薬草知識と社会的役割について引き続き聞き取り・観察・確認作業を行う。 4.薬草知識について、その秘密性の有無について確認・分析し、公表・普及について検討を開始する。
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