2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H05164
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
上杉 彰紀 関西大学, 研究推進部, 非常勤研究員 (20455231)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米田 文孝 関西大学, 文学部, 教授 (00298837)
長柄 毅一 富山大学, 芸術文化学部, 教授 (60443420)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 南インド / 巨石文化 / 鉄器時代 / 墳墓群 / 石製装身具 / 地域間交流 / 社会の複雑化 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度には、まず平成29年6月にバハレーン国立博物館において西暦紀元前後の時代の墳墓から出土した石製装身具のデータ化および分析を実施した。これはバハレーンを含むアラビア半島において出土する石製装身具が南アジア方面からもたらされたと考えられるためで、その可能性を実証的に検証し、南インドの社会が海洋交易にどのように関わっているか考察することを目的としたものである。調査の結果、西暦紀元前後の時代にバハレーン島の墳墓で出土する石製装身具は南アジア産である可能性が高いことが明らかとなった。今後、調査時に作成した玉の孔のシリコン型の顕微鏡観察を進め、南アジア産の可能性をより高い精度で検討する予定である。 平成29年7月には、ケンブリッジ大学考古学・人類学博物館に所蔵される南インド巨石文化の墳墓から出土した石製装身具のデータ化を行った。石製装身具は、北インドと南インド、そして海洋交易を通じて西のアラビア半島や東の東南アジアとの関係を考える上で重要な資料である。南インド巨石文化の遺跡から出土する石製装身具は同時代の北インドの例との類似点が多く、北インドからの製品搬入のみならず技術移転によって南インドでも生産されるようになったと考えられる。それは南インド社会がより複雑化する過程を投影したものと評価できる。 平成29年9・10月には、インド、ケーララ州およびマハーラーシュトラ州において巨石文化期の墳墓群の分布・測量調査を行った。広域に広がる墳墓群の悉皆的分布・測量調査はこれまでほとんど行われておらず、そうした調査は南インド巨石文化を研究する上での基礎資料となる。また、ハリヤーナー州に所在する青銅器時代・鉄器時代の遺物の記録化を実施し、南インドとの比較資料の蓄積を進めた。 平成30年3月には同じくケーララ州およびマハーラーシュトラ州において分布・測量調査を実施した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、南インド先史文化の編年の構築を目的として、現地の研究機関との共同で発掘調査を実施する計画であったが、インド政府からの許可が得られなかったため、それに代わって、ケーララ州、アーンドラ・プラデーシュ州、テーランガーナー州、マハーラーシュトラ州において南インド巨石文化期の墳墓群の悉皆的分布・測量調査や現地の研究機関に所蔵される土器・鉄器・石製装身具などの資料のデータ化・分析を行うことによって、文化変遷の様相を把握し、編年構築の基礎となすこととした。また、現地の研究機関が発掘調査を行っている遺跡から年代測定試料の提供を受け、編年研究の基点となるC14年代測定値の蓄積を行った。 墳墓群の測量調査では、墳墓群が立地する地形環境の詳細を記録し、1遺跡で100基以上にも上る墳墓群の分布パターンを分析するための基礎資料を得た。南インド巨石文化が展開したインド半島部は沖積平野、高原、山間地域など多様な地形環境を含んでおり、南インド巨石文化が多様な地形環境に適応・拡散し、各地でそれぞれの文化景観を形成していたことが明らかとなった。 土器・石製装身具の分析では、墳墓群の多様性とは対照的に南インドで広く共通した要素が分布していることが明らかとなった。結果として、多様性と等質性が南インド巨石文化社会の特質であり、今後の研究の視点となることが明らかとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度には、過去3年間で取得・蓄積したデータの分析を行い、その成果を学術論文・研究書というかたちで公表を進める予定である。 墳墓群については、現地で作成した測量図をもとに墳墓群が立地する地形環境および墳墓の分布パターンの詳細を地理情報システムを利用して解析する。 石製装身具については、インド、ケーララ州およびマハーラーシュトラ州の巨石文化遺跡から出土した資料だけでなく、バハレーン(バハレーン国立博物館所蔵資料)、パキスタン(ケンブリッジ大学考古学・人類学博物館所蔵資料)の遺跡から出土した資料から作成したデータを蓄積しており、計測値に基づいた形態的分析と玉孔のシリコン型の顕微鏡を観察による技術的分析を行うことによって、各地の石製装身具の比較研究を行う。これによって、南インド巨石文化社会が周辺地域とどのように関係していたのか考察することが可能となる。 土器については、ケーララ州、マハーラーシュトラ州、アーンドラ・プラデーシュ州、テーランガーナー州各地の巨石文化遺跡出土の資料のデータ化を行っており、それらの形態分析を進めることによって、地域間の関係を考察する予定である。
|
Research Products
(9 results)