2016 Fiscal Year Annual Research Report
中央アジア、シルクロード拠点都市と地域社会の発展過程に関する考古学的研究
Project/Area Number |
15H05166
|
Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
山内 和也 帝京大学, 文化財研究所, 教授 (70370997)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山藤 正敏 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 研究員 (20617469)
吉田 豊 京都大学, 文学研究科, 教授 (30191620)
久米 正吾 東京藝術大学, 社会連携センター, 講師 (30550777)
城倉 正祥 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (90463447)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 都市遺跡アク・ベシム / キルギス、チュー川 / ソグド / 唐 / イスラーム / 東西文化の接点 / 灌漑システム |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、春季(4月21日~5月16日)、夏季(8月16日~9月3日、8月11日~22日)及び秋季(10月13日~10月22日)に現地において調査研究を実施した。春季はシャフリスタン地区において発掘調査を行い、下方への発掘調査を継続した。夏季は、2班に分かれて、主として出土遺物の整理と研究を行い、あわせて周辺遺跡の踏査や灌漑システムの調査を実施した。秋季は、ドローンを用いて、農作物の収穫を終えたアク・ベシム遺跡において地形図作成のための調査を実施するとともに、平成29年度に本格的な発掘調査の開始を予定しているラバト地区調査の準備を行った。 周辺遺跡及び灌漑システムの調査を実施したことで、遺跡の立地や都市の形成を解明するための重要な成果が得られた。中世期においてチュー川流域に数多くの都市が新たに出現することを可能としたのは、単にソグド人がこの地に進出してきただけでなく、その故地での知識と経験を生かして、新たな灌漑システムを構築したことであることが明らかとなってきた。 ラバト地区から出土した瓦の分析や研究によって、ラバト地区とされている場所が、唐代の城砦都市である「砕葉鎮城」であったことが明らかとなりつつある。 日本考古学協会の総会や「第24回西アジア発掘調査報告会」、並びに早稲田大学が主催したシンポジウム「アジアの古代都市・都城の比較考古学-分析の方法論と視点を中心に-」、帝京大学文化財研究所が開催した「2016年度中央アジア遺跡調査報告会」等の学会や研究会、シンポジウムにおいて本研究の成果を発表した。また、あわせて一般市民を対象とした講演会や新聞への寄稿を通して、広く本研究の成果を公表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先方の協力機関であるキルギス共和国科学アカデミーとの協力体制、現地における調査体制が確立し、円滑かつ効率的な調査研究が実施できた。発掘そのものの進捗状況も順調であり、都市構造の解明が進みつつある。 発掘調査と並行して実施している周辺遺跡の踏査や灌漑システムの調査も順調に進んでおり、チュー川流域における都市の立地や都市形成の実態が明らかになりつつある。また、こうした周辺遺跡の調査を通して都市民と周辺の遊牧民との関係についても解明の糸口を把握することができた。 唐代の城塞都市であるラバト地区の発掘調査の準備も順調に進んでおり、平成29年度には本格的な調査を開始することが可能となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
都市構造の解明の観点からは、平成29年度もシャフリスタン地区において発掘調査を継続し、下方に調査を進めることによって、都市構造の変遷の解明に関する研究を進める予定である。 シルクロードの拠点都市の立地や形成に関しては、さらに周辺遺跡の踏査を継続する必要がある。また、これまでの調査によって、中世期における新たな灌漑システムの構築がチュー川流域の都市の形成を可能にした重要な要因となっていることが明らかとなってきたことを受け、平成29年度においても灌漑システムの解明に関する調査を継続する。 また、これまでの調査により、アク・ベシム遺跡を形成するラバト地区が唐代の城塞都市であることが明らかとなってきていることから、平成29年度に本格的な発掘調査を開始し、確実な証拠を入手する。あわせて、東西文化の接点の実態を明らかにすることを目指す。 本年度は本科研による研究の最終年度にあたることから、これまでの成果を取りまとめるとともに、国際シンポジウム等を通じて広くその成果を公表する。
|
Remarks |
帝京大学シルクロード学術調査団の調査速報集として研究成果を公表
|
Research Products
(8 results)