2016 Fiscal Year Annual Research Report
平等と卓越性のバランス政策を軸とする自律的公設学校の国際比較
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15H05201
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Research Institution | Kyoto Bunkyo University |
Principal Investigator |
中島 千恵 京都文教大学, 臨床心理学部, 教授 (20309107)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉本 均 京都大学, 教育学研究科, 教授 (50211983)
服部 美奈 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 教授 (30298442)
澤野 由紀子 聖心女子大学, 文学部, 教授 (40280515)
吉原 美那子 高崎経済大学, 地域政策学部, 准教授 (00422147)
渡邊 あや 津田塾大学, 学芸学部, 准教授 (60449105)
石川 裕之 畿央大学, 教育学部, 准教授 (30512016)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 自律的公設学校 / 教育の平等 / 卓越性 / チャータースクール / アカデミー / 公教育制度 / 公共性 / 国家戦略 |
Outline of Annual Research Achievements |
本科研は自律的公設学校を国家戦略としてどのように活用しているのか、またそのことによって公教育の構造や社会にどのような変化とリスクをもたらしているかについて、平等と卓越性を軸として国際比較をすることを目的とする。 1.海外調査:研究2年目となる平成28年度は、アメリカ、スウェーデン、フィンランドの調査を実施した。アメリカとスウェーデンは国際的に自律的公設学校の拡大が著しい国であり、これらの国の政策動向は本科研のテーマでは重要である。スウェーデン、アメリカ、イギリスは新自由主義路線で共通性を持つ自律的公設学校を設置しているが、フィンランドは自律的公設学校を設立するのではなく、公立学校の多様化を図ることによって保護者のニーズに応えようとしている。しかし、学校選択の拡大に批判もある。現地調査に先立ち、国際比較教育学会、北欧教育学会に参加し、本テーマに関連する学術的な情報を得た。公立学校運営に企業が関与する動きは、英、米、スウェーデンのみならず、インド、アフリカの多くの国に拡大していることがわかった。 2.学会発表:欧米では、自律的公設学校運営に国際的に販路を広げ、他国の公立学校を運営する大企業の参加が予想していたより著しかった。このような傾向の中、従来の公教育制度が変わりつつある様子を日本教育学会で報告した(ラウンドテーブル「国境を越える公営学校運営ビジネス~自律的公設学校の国際比較を通して見える公教育制度の諸相」)。 3.研究会の開催:平成28年度は、予算の都合から年1回の研究会を開催した。OECDの動向に詳しい研究者1名と日本の国家戦略特区で自律的公設学校の設立に取り組んでいる大阪市の担当者3名に研究会に招聘し、OECDにおける会議で議論されている内容と我が国で進行中の状況を把握した。 4.中間報告書の作成:アメリカ、韓国、シンガポールを中心に中間報告書を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画は、概ね順調に遂行できた。平成28年度は年2回の全体集会を開催する予算を取りにくかったことと、メンバー全員が集まれる都合があまりなく、全体集会開催が1月になってしまった。しかし、ほぼ予定通りに推進することができた。 海外調査はおおむね順調に実施できた。とりわけ、治安が懸念されたヨーロッパの調査も無事、実施することができた。インドネシアと韓国については、それぞれに学科長や学会事務局の大役があたり、訪問のタイミングを逸してしまった。しかし、これらの調査は平成29年度にまわすことで問題ない。8月に実施した日本教育学会におけるラウンドテーブルを通して、北欧、英米における自律的公設学校の特徴を整理するとともに、共同研究のメンバー以外の研究者からの視点も得ることができた。また、この学会発表を通して、OECDの動向に通じている人材との関係もでき、研究の充実につながった。 研究計画にはなかったが、平成27年度からフィンランド・インスティテュートとの関係ができ、フィンランドの研究者を含めて研究活動をする計画が進行していたが、フィンランド・インスティテュート担当者の突然の異動で、実現まで至らなかった。この点は大変、残念に思っている。しかし、北欧のメンバーがそれぞれ別の形で恩恵を受けることができたので、日本の教育への貢献につながったと考えてよいと考える。 平成28年度は日本の国家戦略特区で進行している自律的公設学校について、現場担当者から詳しい話を聞くことができたことと、一方的に情報をいただくのではなく、双方に役立つ情報提供などの協力関係ができた点は、プラスに評価して良いと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、韓国、インドネシア、マレーシア、イギリスの調査を計画している。スウェーデン、アメリカも再度、訪問することを検討している。近年、どの国も治安については安心というわけでもない。訪問に無理のない計画にするよう、心がける。 本科研の最終年度であり、最終報告書の作成及び、共同研究者各自による研究論文または著書の執筆に力を入れる。各国の実態、政策、学術的視点と現実とのギャップなどを確認しながら、自律的公設学校を通して国家の卓説性と平等の政策がどのように展開しているか、公教育制度(国民教育制度)がどのように変容しつつあるかを国際比較の視点でまとめていく。 現在までの研究から、複数の興味深い観点が見いだされたので類型化できなか検討していく。ひとつ目の視点は国境を越える学校運営ビジネスの動向である。平等と卓越性に対して思いもかけぬ視点を提供しており、今後、更に深める方向性について検討していく。2つめに保護者の学力志向やニーズへの国家政策の対応を自律的公設学校を通して、類型化できないか検討していけるのではないかと考える。
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Remarks |
京都文教大学ホームページ⇒「科学研究費による研究の概要」
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Research Products
(13 results)