2015 Fiscal Year Annual Research Report
Ecological study on acquisition of lateralized behavior
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15H05230
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小田 洋一 名古屋大学, 理学研究科, 名誉教授 (00144444)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
畑 啓生 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 准教授 (00510512)
竹内 勇一 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (40508884)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | タンガニイカ湖 / マラウィ湖 / シクリッド / 鱗食魚 / 左右性 / 形態進化 / 発達 / RNA-Seq解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アフリカ・タンガニイカ湖に生息する鱗食シクリッド(Perissodus microlepis)を研究対象として、鱗食魚の右利き・左利きの獲得過程を解析するとともに構造的・機能的な左右差をもたらす遺伝子基盤を明らかにすることを目的とした。獲得過程に関しては、タンガニイカ湖で採集した様々の大きさの稚魚と成魚の胃内容物に含まれる被食魚の鱗から左右性行動を推定し、下顎形態の左右非対称性との対応を解析した。この成果は、PLoS ONE (2016)に発表した。また、種間比較を行うために、アフリカ・マラウィ湖の鱗食シクリッド(Geniochromis mento)を採集し、胃内容物の解析と骨格形態の左右非対称性を計測した。これまで困難だったPerissodus microlepisの繁殖に成功し、左右性行動の発達過程を実験室内で観測できるようになり、捕食経験あるいは日齢と左右性の発達との関係を詳細に解析した。その結果、日齢ではなく捕食経験が襲撃方向の偏りの発達に重要な役割を果たすことを見出した。さらに、捕食行動のキネティクスの解析から、驚くべきことに生得的な左右差があることが示唆された。一方、利きの発現に関与する脳内遺伝子を同定するためにRNA-Seq解析を行った。得られたシーケンスデータはナイルティラピアのリファレンス遺伝子配列にマッピングされ、22238遺伝子のコンティグを決定した。解析の結果、終脳では4遺伝子、視蓋では4遺伝子、後脳では5遺伝子が、利きと対応する発現量の左右差を示した。また、右脳あるいは左脳の一方に特有な遺伝子発現を示したのは、終脳では7遺伝子、視蓋では9遺伝子、後脳では12遺伝子であった。現在、qPCR解析によりこれらの確認を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
鱗食シクリッド(Perissodus microlepis)の実験室内での繁殖は、鱗食行動の左右性および口部形態の左右差の発達を詳細に計測することを可能にしたばかりでなく、左右性の遺伝子基盤を解析する重要な標本を与えることになった。この標本を用いた左右性発達の解析に関しては、論文にまとめ国際的な科学誌に投稿した。P. microlepisに関しては、これまで遺伝子のマッピングが行われておらず、今回が初めての遺伝子基盤解析となったが、すでに解析されている同科のナイルティラピアのシークエンスデーターをゲノムマッピングのリファレンスとした。その結果、鱗食行動を制御する部位として候補の上がる終脳・視蓋・後脳で合わせて、13遺伝子が左右性に対応した発現の可能性が示唆された。さらに、左脳と右脳間でもともと発現量が異なる可能性も28遺伝子について示され、これらのいくつかはほ乳類の脳でも左右差が認められ、共通した特異的発現を示すことが明らかとなった。以上より、左右性に関する分子遺伝基盤解析が実現できたと考える。アフリカ・マラウィ湖の鱗食シクリッド(Geniochromis mento)は他の魚の鱗だけでなく、ヒレも摂食することが見出された。G. mentoの捕食行動を水槽内で観察したところ、胃内容分析結果と同様で、鱗とヒレを頻繁に摂食した。さらに、獲物への襲撃方向は有意な偏りを示す個体が多く、その方向は口部形態の左右差と明確な対応があった。一方で、G. mentoの口部形態の左右差はP. microlepisほど大きくないことが明らかとなり、それは食性の違いによると示唆された。これらにより、左右性行動の種間比較の道が開けた。このような研究成果および経過が得られているので、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
1.捕食行動の左右性の発達:繁殖で得た稚魚を捕食経験なしで飼育し、異なる発達段階で捕食行動における襲撃方法と捕食成功率をこれまでに調べてきた。これに運動解析で得られた結果を加えてまとめ、発達過程における経験が捕食行動の左右差にどのような影響を及ぼすかを明らかにして論文にまとめる。 2.下顎形態の左右性の発達要因:これまでに、鱗食未経験の個体と野外個体の下顎形態の左右差を比較し、下顎形態の左右性に関する遺伝的要因と後天的要因を検討してきた。さらに計測する個体数を増やして、得られた結果を論文にまとめる。 3.遺伝子解析:RNA-seq解析によって見いだされた、利きの発現に関する候補遺伝子についてqPCR解析を行い、これらの候補遺伝子の発現量が実際に利きごとに違うかを確認する。また、様々な発達段階の鱗食魚の脳を用いてRNA-seq解析を行い、発達に伴って特異的に発現するような利きに関わる遺伝子を網羅的に調べる。以上の内容を論文としてまとめる。 4.鱗食と左右性の進化:これまでに採集したアフリカマラウィ湖の鱗食魚Geniochromis mentoを用いて、高速度ビデオカメラによる捕食行動の運動解析を行い、運動能力の左右差の検討と、発達過程における鱗食の度合いと左右差の変化を明らかにする。G. mentoの胃内容分析および捕食行動観察に関す内容を論文にまとめる。また、同じマラウィ湖に生息し異なる食性をもちながらも、左右性が見込める稚魚食シクリッドNimbochromis livingstoniiについて、現地での捕食行動の観察および下顎骨の左右差を計測し、それら結果について、論文にまとめる。
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Research Products
(24 results)
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[Journal Article] Molecular phylogeny of obligate fish-parasites of the family Cymothoidae (Isopoda, Crustacea): Evolution of the attachment mode to host fish and the habitat shift from saline water to freshwater.2017
Author(s)
Hata, H., Sogabe, A., Tada, S., Nishimoto, R., Nakano, R., Kohya, N., Takeshima, H., Kawanishi, R.
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Journal Title
Marine Biology
Volume: 164
Pages: 105
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Laterality is universal among fishes but increasingly cryptic among derived groups.2017
Author(s)
Hori, M., Nakajima, M., Hata, H., Yasugi, M., Takahashi, S., Nakae, M., Yamaoka, K., Kohda, M, Kitamura, J., Maehata, M., Tanaka, H., Okada, N., Takeuchi, Y.
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Journal Title
Zoological Science.
Volume: -
Pages: -
Peer Reviewed
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