2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H05231
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
橋本 哲男 筑波大学, 生命環境系, 教授 (50208451)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 健一郎 筑波大学, 生命環境系, 教授 (30282198)
稲垣 祐司 筑波大学, 計算科学研究センター, 教授 (50387958)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 嫌気環境 / 真核微生物 / ミトコンドリア関連オルガネラ / 縮退進化 / 代謝多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
真核生物の中には、嫌気適応や寄生適応によって典型的なミトコンドリア(mt)を二次的に失った生物群が存在し、系統樹上に散在している。これらの生物は機能が縮退したmtと考えられるミトコンドリア関連オルガネラ(MRO)をもっている。典型的mtからMROへの縮退的進化の変遷を辿ることは、真核系統に普遍的に存在するmtの真の機能を明らかにする上で重要であるが、それらの機能の詳細や普遍性・多様性に関する知見は極めて乏しい。本研究ではこれまで我々のグループが進めてきた、典型的なmtをもたない鞭毛虫からなるフォルニカータ生物群の進化と多様性、mt関連オルガネラの研究成果を基盤に、研究対象を真核生物全体に拡張した研究を行なうこととした。H27年度はこれまで調査対象地としてきて実績のあるパラオ共和国の海水湖の嫌気環境調査を行い、多数の嫌気性真核生物候補を株化した。これらからDNAを抽出し、SSUrRNA遺伝子を単離して配列を決定し、分子系統解析を行った。大多数については系統的位置が既知の生物の近縁種として位置づけられた。一方、既存の系統群に明確に位置付けられない、すなわち、深い分岐を示す可能性のある複数の株が存在することが明らかとなった。中でも、嫌気性で典型的なmtをもたない生物のみから構成されるフォルニカータ生物群やパラバサリア生物群の分岐の近傍に位置付けられるPAP020株は、今後mtからMROへの退行進化を研究する上で重要な手がかりを与える生物となる可能性が高いと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者がH27年12月に病気入院したため、H27年度に行う予定であったマレーシアの嫌気水圏環境調査を実施できず、マレーシア調査をH28年度に延期した。そのため、嫌気真核微生物の候補を多数株化するという、研究の初期段階の部分に多少の遅れを生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度には、パラオの再調査を行うとともに、マレーシアのクアラルンプール周辺のPOME池を対象にした調査を行う。POME池は嫌気的であり、これまで真核微生物の調査があまり行われていないため新奇性の高い生物の発見に繋がる可能性がある。
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Research Products
(6 results)