2016 Fiscal Year Annual Research Report
インド経済圏内の食品流通システムの展開方向と日本農産物の輸出可能性の究明
Project/Area Number |
15H05253
|
Research Institution | The Open University of Japan |
Principal Investigator |
河合 明宣 放送大学, 教養学部, 教授 (90195024)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
月原 敏博 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(総合グローバル), 教授 (10254377)
JOSHI NIRAJ 広島大学, 国際協力研究科, 特任助教 (20732275)
Maharjan K.・L. 広島大学, 国際協力研究科, 教授 (60229599)
藤島 廣二 東京聖栄大学, 公私立大学の部局等, 客員教授 (70287449)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 北インド経済圏 / 食品流通システム / 日本農産物輸出 / 農産物の流通チャネル / 農産物の物流 / 高度差利用農産物貿易 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)4年計画の2年目で、分担者等は、最低1回は、決定した4つの対象地域の現地調査を実施し、それを踏まえ食流通システムの特徴把握を行った。①藤島・堀内は、デリーにおける青果物流通の特徴把握と日本農産物の輸出可能性検討のため卸売市場及び日本食レストラン調査を実施した。②ケシャブは、北インドではデリー卸売市場でコメ、ジャガイモ、リンゴ等特定品目に絞って生産者から消費者までの流通ルート概要を、研究協力者Binu Sundasと聞取をした。インド・ネパール間貿易の把握目的で、Sundasとシリグリを視察した。特定品目についてUP, WB州などでも同様な調査実施開始するために協議し調査項目を決めた。③ケシャブは、ネパールでは中部・東部ネパールの主な卸売市場でJoshi, Niraj Prakashと食品の流通を調査した。④月原は、北インドのシリグリを中心に北東インド―ブータン・ネパール間の交易動向調査を実施した。インド北部平野部と国境を挟んで隣接するヒマラヤ南面傾斜地は、標高3千メートル前後まで作物栽培が可能である。2国で作季が異なるジャガイモや葉もの野菜は季節で輸出入が逆転する。⑤河合は、冷涼な気候とモンスーンの降雨により標高3千メートルまでは無菌に近い良質な生産が可能であるブータン産ジャガイモの商品作物としての特徴を把握した。冬作であるインドの端境期にブータンから生食用及び種子用輸出が始まる。ジャガイモは高度差利用の農産物貿易品の典型である。ブータンのインド向け輸出農産物の産額順位は、オレンジ、リンゴ、ジャガイモの順である。 (2)各自の現地調査を基に、南アジア地域研究広島大学拠点(HINDAS)の広島大学で、共通テーマ「インド経済圏北部における食料品流通システムに関する研究」で7名が発表し、参加した専門家の質疑・コメントを得ることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分担者の対象地域とテーマについて概略を述べる。本研では、日本、中国、東南アジアの専門家である藤島・堀内を除けば、分担者は対象地域南インドにおいて、各自の専門領域で現調査に基づいた研究を蓄積している。一方、本研究では、卸売市場、ブータンの公設市場(Sunday Market)等の事例としての点を把握することに加え、生産者から消費者を結ぶ食品流通システムの現状把握と今後の変化を探る必要がある。このため、①現地調査協力員との緊密な連携が不可欠である。②同時に各国の農産物流通の制度、法律、規制等と統計データの収集分析を行わなければならない。日本、中国、東南アジアとの比較の観点も重要である。 この点では、予備調査を行い、観察データの収集は第2年度から軌道にのっているが、分析して全体像を把握し、仮説を提出する迄に至っていない。この点で(2)おおむね順調に進展しているとした。 これを克服する意味で、平成28年度には、南アジア地域研究広島大学拠点において本研究テーマ独自で第4回研究集会を開催して参加した専門家にコメントを仰いだ。また、平成29年度はネパールにおいて研究会を開催し、現地(ネパール、インド、ブータン)専門化からのコメント、評価を仰ぐ計画である。
|
Strategy for Future Research Activity |
分担者の対象地域とテーマ別に述べる。北インド:藤島・堀内班 ①デリーでの青果物流通ルートの把握、②流通に関する問題点の把握、③データと実態との整合性(または乖離)の確認、④日本産生鮮青果物・加工食品(菓子)の輸出動向分析を行う。北インド:ケシャブ班 インド・ネパールの貿易における穀物の取引についての昨年の現場観察に基づき、南部ネパールの籾米加工業者等の聞取調査を行う。中部・東部ネパール:ケシャブ班 カトマンズ盆地において、青果物など本研究で決めた特定品目の供給構造、産地・生産者の概要を特に女性の役割に焦点をあてManjeshwori Singh氏との調査を実施する。国内主要な卸売市場で食品の流通についてJoshi, Niraj Prakashと調査を実施する。また山地・平地の関係、国境超えの物流の調査を他の現地協力者と実施する。ブータン(北インド):月原 インドとネパール・ブータンとの国境周辺に存在する貿易拠点である、インド東部シリグリでの調査を基に、中央部のネパール,西部のインドヒマラヤでの調査を実施し、貿易拠点としての比較を行う。これら拠点は英領期の地域開発により誕生しており、地域開発の歴史地理的側面にも関心を払う。ブータン:河合 ブータンではジャガイモと数種の果物は輸出商品作物である。これ以外の農産物は自給用であるため、非農業世帯向けにはインドから輸入されている。ブータン政府による生産-消費に及ぶバリューチエン構築政策を把握し、数県で生産者グループ及び県庁設置の公設市場で調査し県レベルでの農産物流通システムを把握する。
(2)11-12月、ネパールでインド・ネパールの研究者を加えた研究成果中間発表会開催し報告書を作成し2019年度最終成果に繋げる。
|
Research Products
(19 results)