2015 Fiscal Year Annual Research Report
ガーナ国ボルタ川流域におけるイネのモレキュラーモニタリング
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15H05257
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Research Institution | Japan International Research Center for Agricultural Sciences |
Principal Investigator |
圓山 恭之進 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 生物資源・利用領域, 主任研究員 (10425530)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻本 泰弘 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 生産環境・畜産領域, 研究員 (20588511)
櫻井 哲也 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, ユニットリーダー (90415167)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 硫黄 / 遺伝子発現 / ガーナ |
Outline of Annual Research Achievements |
サブサハラアフリカ(調査対象国:ガーナを含む)でコメの需要が急速に増加していが、世界規模の「気象の極端化」等による農業被害によって食料供給の不安定化が進んでいる。このような状況を踏まえ、CARDは2008年から2018年までの10年間でサブサハラアフリカにおけるコメ生産量を2倍にすることを目標とした。これまで、コメの増産に向けた研究は、CARDパートナーのアフリカ稲センター(AfricaRice)、国際稲研究所(IRRI)、国際農林水産業研究センター(JIRCAS)が中心的に行ってきた。具体的には、1. 水稲・陸稲遺伝資源の評価および改良、2. アジア型水田基盤整備および水稲栽培モデルを開発、3. 河川流域の稲作に効果的な生産技術開発である。これまでにネリカ米の普及等で成果を上げている。しかし、アフリカのイネ生産圃場を対象に、飛躍的に進歩しているゲノム解析技術を活用した遺伝子調査研究は行われてこなかった。2015年度の研究においては、ガーナ国北部の氾濫低湿地の試験圃場を活用して、新規マイクロアレイを用いて網羅的遺伝子発現解析を行い、養分欠乏地域における安定的なイネ生産のための基盤整備を行った。同地域を含む西アフリカのイネ生産圃場では、硫黄欠乏が顕在化しており、イネの生育阻害の要因となっている。そこで、これまで実験室レベルで同定された硫黄吸収に関連する遺伝子が現地圃場でどの程度発現し、イネの生育収量に影響を及ぼしているのかを検証した。さらに、硫黄施肥条件を変えた試験圃場における遺伝子発現を網羅的に新規マイクロアレイで解析して、圃場レベルで機能するマーカー遺伝子の同定を行うための実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ガーナの主要品種であるジャスミン85を硫黄成分の施肥区および無施肥区で栽培した結果、施肥区において有意に高い乾物重を示した。ガーナ国北部の氾濫低湿地の試験圃場の土壌には、硫黄の供給力がほとんどなく、イネの生産性および施肥効率の改善には、硫黄成分の添加が不可欠であることが確認された。次に、同処理条件下における遺伝子発現をマイクロアレイで網羅的に解析した結果、遺伝子発現量に2倍以上の差がみられた遺伝子は、地上部と地下部でそれぞれ7584個と3264個同定された。同定された遺伝子の内、特に大きな発現を示した遺伝子群に着目して、既知の遺伝子との配列および構造の類似性を解析した結果、硫黄トランスポーターの相同性遺伝子が選抜された。同遺伝子は、硫黄欠乏条件において、地上部と地下部でそれぞれ41倍と172倍増加しており、地上部より地下部で顕著な発現がみられた。これまで硫黄欠乏条件の水耕実験で同定されてきた遺伝子が、生産現場でも、発現量に顕著な違いが検出された意義は大きいと考えられた。硫黄トランスポーター以外にも、大きな変化量を示した未知の遺伝子が複数検出されており、これらの遺伝子は、硫黄欠乏が観察される実際の生産圃場でのイネ生育や硫黄吸収・利用に関与する新規の遺伝子候補として期待できた。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度には主要品種の栽培試験及び遺伝子発現解析を行えたので、2016年度は、ガーナ土壌に対する耐性品種を選抜して、栽培試験および遺伝子発現試験を行う。耐性品種の選抜は種々の環境ストレスの影響を考慮して、ガーナ圃場の土壌を輸入して、温室試験で栽培試験及び遺伝子発現解析を行い、硫黄欠乏に対する耐性品種を選抜する。
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