2015 Fiscal Year Annual Research Report
モンゴル国の都市化とモータリゼーションに起因する重金属汚染の実態と遊牧業への影響
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15H05266
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
戸敷 浩介 宮崎大学, 地域資源創成研究センター, 准教授 (00542424)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内藤 博敬 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (30254262)
劉 庭秀 東北大学, 国際文化研究科, 准教授 (70323087)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 重金属汚染 / 鉛蓄電池リサイクル / 家畜の健康被害 / 国際資源循環 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、モンゴル国の鉛蓄電池リサイクルによる環境汚染と家畜の健康被害の実態を明らかにするため、以下の3つの視点から調査を行っている。
A)家畜の健康被害調査:平成26年度の事前調査において、鉛蓄電池リサイクル施設周辺の遊牧民にヒアリングした際、家畜の健康被害に関する情報が寄せられていたことから、平成27年度は当施設周辺の家畜と、当施設から100km程度離れた場所で遊牧されている家畜の血液サンプルを採取し、血中鉛濃度を測定した。その結果、当施設周辺の家畜の血中鉛濃度は、67~281[μg/dL]で検出された。一方、遠方の家畜の血中鉛濃度は、66~88[μg/dL]で検出された。ただし、日本の仔牛の事例では、50~100[μg/dL]で鉛中毒症状がみられるとの報告があることから、より詳細に調査する必要があると考えられる。 B)環境中重金属汚染の実態調査:平成26年度の事前調査において、鉛蓄電池リサイクル施設周辺土壌から高濃度の鉛が検出されたことから、平成27年度は当施設の排水溝と思われる場所からの距離および深度による鉛濃度を測定した。その結果、排水溝周辺の表面土壌からは約15,000[ppm]の鉛が検出された。また、排水溝から70mくらいまでは非常に濃度が高いことが分かった。また、深度方向の測定結果から、少なくとも排水溝から漏れる高濃度の鉛を含む水が、土壌に浸透して地下水や近隣の湖を汚染する可能性は低いことが示唆された。 C)不適切な資源リサイクル活動の現状把握:現地機関や当施設の周辺住民、廃自動車関連各所(中古部品市場等)へのヒアリングを行った。その結果、当施設では年間1,2回、3日間程度の操業で精錬を行っており、郊外の草原で行われているため、常時監視することは困難であり、現状を踏まえた実効性のある規制や監督方法が必要であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究計画と現在の進捗状況は、以下の通りである。 A)家畜の健康被害調査:当初の予定通り、遊牧民へのヒアリングと家畜の血液サンプル採取を行った。想定の通り、施設周辺では血中鉛濃度が非常に高い個体がいることが分かったが、遠方の家畜にも比較的高い個体がいることが分かった。このため、次年度以降により広範囲にサンプリングする必要があることが分かった。 B)環境中重金属汚染の実態調査:当初の予定通り、当施設を中心に土壌をサンプリングし、重金属濃度を測定した。その結果、想定の通り鉛については深度方向に浸透していないことを確認し、少なくとも地下水や近隣の湖に土壌を通して鉛が移動していないことを確認した。 C)不適切な資源リサイクル活動の現状把握:当初の予定通り、関係各所へのヒアリングや資料等の収集を行い、当施設を含む鉛蓄電池リサイクルの流れについては概ね把握できた。一方で、その量については資料や情報が少なく、十分に把握できていない。
いくつか次年度に残している課題はあるが、研究計画は全体的に順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの調査において、ウランバートル市郊外で行われている鉛蓄電池リサイクルの状況を明らかにし、土壌汚染、家畜の血中鉛濃度などのスクリーニングを行ってきた。そこで今後は、高濃度汚染箇所周辺における土壌、植物、水などの重金属濃度分布、家畜への暴露経路等を調査・検討し、遊牧されている家畜が重金属のリスクを回避するための具体的な方法について検討する。また、これまでの調査でウランバートル市から遠く離れた家畜の血中鉛濃度も比較的高い値を示していることから、遊牧履歴と血中鉛濃度の関係についても調査を進める。更に、現地機関と連携しながら、自動車用鉛蓄電池リサイクルのフローと将来の廃鉛蓄電池発生量を明らかにし、環境保全のための規制方法について検討を始める。
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Research Products
(4 results)