2016 Fiscal Year Annual Research Report
モンゴル国の都市化とモータリゼーションに起因する重金属汚染の実態と遊牧業への影響
Project/Area Number |
15H05266
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
戸敷 浩介 宮崎大学, 地域資源創成学部, 准教授 (00542424)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内藤 博敬 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (30254262)
劉 庭秀 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (70323087)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | モータリゼーション / 重金属汚染 / 家畜 / モンゴル / 鉛蓄電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の調査では,ウランバートル市郊外の鉛蓄電池リサイクル施設周辺と,東西南北に20~50km離れた地域で,遊牧家畜の血液と,その周辺の土壌をサンプリングし,それぞれ鉛の濃度を分析した。特に,市郊外の鉛蓄電池リサイクル施設周辺については,50mメッシュで土壌をサンプリングし,鉛濃度の分布についてより詳細に調べた。また,この施設周辺で遊牧されている家畜については,平成27年8月に採血した同一家畜の血液を,平成29年4月と8月に採血し,血中鉛濃度の推移について調べた。 その結果,土壌中鉛濃度については,市郊外の鉛蓄電池リサイクル施設周辺では,遊牧家畜が牧草を食んでいるエリアにも高濃度の場所があることが分かった。一方,家畜の血中鉛濃度は,ウランバートル市から南方の遊牧民の家畜が非常に高かった。その周辺には,鉛蓄電池リサイクル施設等の汚染源とみられる施設は見当たらず,他の汚染源の可能性についても検討する必要があると考えられる。また,鉛蓄電池リサイクル施設周辺の同一家畜の血中鉛濃度の推移については,平成27年8月,平成29年4月に比べて,平成29年8月の濃度が一桁低かった。この施設の運転状況はこれまでと同様に数日間の稼働を行っていることは,遊牧民らへのインタビュー調査で確認している。このことから,餌となる牧草に付着した鉛が,大雨などが原因で落ちた可能性が示唆された。 一方で,汚染源となっている鉛蓄電池リサイクル施設等について,許認可や草原環境における管理体制などについても,現地研究機関と議論を始めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
調査は概ね計画通りに進められているが,平成28年度の調査結果を受けて,今後の計画を一部修正する必要がある。これまで鉛の汚染源としては,ウランバートル市郊外にある鉛蓄電池リサイクル施設が主であったが,このような施設が周辺にはない地域の遊牧家畜の血液からも,鉛が高いレベルで検出された。遊牧民へのインタビューでは,上記のような施設の近くに滞在したことはなく,未知の汚染源があると考えられることから,今後の調査計画についても考慮していくことにする。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでと同様に,土壌と家畜の血液のサンプリングと鉛濃度の分析を進めるが,これに加えて牧草中の鉛濃度についても調べる予定である。また,未知の鉛の汚染源があることを考慮して,ウランバートル市周辺及び郊外の鉛濃度について,可搬型蛍光エックス線分析機による現場でのスクリーニング調査を進める。 鉛を中心に重金属汚染の広がりや汚染源との位置関係等について把握するとともに,汚染が起こる背景として,増加・多様化する輸入物品の消費やリサイクル,廃棄段階における制度や規制,技術等の現状とその在り方についても検討していく。
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Research Products
(4 results)