2016 Fiscal Year Annual Research Report
マラリア病態を規定する防御免疫・免疫抑制のバランスに関するケニアでの調査研究
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15H05277
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
由井 克之 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (90274638)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 大輔 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 講師 (50423637)
濱野 真二郎 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (70294915)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | マラリア / 免疫応答 / 末梢血 / 住血吸虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度のケニア・ビタ地区の学校でのマラリア調査のサンプル解析が終了していなかったため、現地研究室に残したサンプル(学童の末梢血を様々な刺激で培養した培養上清)の解析を行った。約150名の学童から得たマラリア及び住血吸虫感染状況、末梢血白血球のフローサイトメトリー解析、末梢血白血球の抗T細胞受容体抗体刺激、マラリア粗抗原刺激に対するサイトカイン産生の解析を行った。 マラリア原虫感染については、低いレベルではあったが、全体の約三分の一の児童に原虫血症の存在が確認された。原虫血症陽性と陰性のサンプルに分け、原虫保有者と非保有者の間で有意な差が見られるか調べた。CD4、CD8 T細胞の比率、T細胞の分画、B細胞の比率、NK細胞の比率などでは、両者に有意な差は認められなかった。抗T細胞受容体抗体刺激に対するサイトカイン産生(インターフェロンγ、IL-2)については、原虫保有者で非保有者に比較して有意に低下していた。このことから、マラリア原虫保有者は、発症していなくとも免疫抑制を受けている可能性が示唆された。 以上の調査では、T細胞によるIL-27産生は確認できなかった。マラリア原虫感染者でIL-27産生T細胞を検出できなかったのは、原虫血症レベルが低いことや無症状であることが関係している可能性が考えられた。そこで、2016年度はマラリア原虫患者の末梢血を調べることにした。ビタ地区クリニックの協力を得て、クリニックを訪ねた学童の血液を調べることとした。サンプルは、現地・長崎大学拠点研究室に持ち込み、スメア標本による原虫血症調査、血漿凍結、分離した末梢単核球のフローサイトメとリー解析、末梢単核球の抗原あるいは抗T細胞受容体抗体刺激下での培養、培養上清のサイトカインELISA測定、CFSEラベルした細胞を用いた増殖応答の解析を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年の学校におけるサンプル収集、調査に続き、2016年度は現地クリニックの協力を得て患者サンプルを収集、調査することができた。ビタ地区の長崎大学拠点研究室には、細胞の分離、培養、フローサイトメトリー、ELISAなどの設備があり、順調に稼動している。現地では毎日停電があるが、それにもかかわらず実験室は高いレベルで研究ができる状態が保たれており、これらの実験でデータを収集することができることは、高く評価できる。これらの資源を十分に活用し、現地クリニックの協力も得て、マラリアに関する免疫応答の調査を順調に実施することができた。さらに、これまでのデータまとめから、学校に通学してくる無症状で一見元気な学童でも、マラリア原虫保有者では免疫抑制がかかることを示唆するデータを得ることができた。一方で、当初の目的のひとつであったIL-27産生CD4T細胞については、まだ確定的な証拠を得るには至っていない。これについては、今後さらに対象患者の範囲を広げるなどの必要があると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度のサンプルについては、データは集まったので論文としてまとめる作業を進める。2016年度のサンプルについては、まだ解析が終了していないサンプルが現地のビタ地区研究室に残っており、サンプル解析を終了させ、クリニックでのデータをまとめて統計解析を進め、まとめる必要がある。今年度は、これらのデータまとめとに注力する予定である。今後の課題としては、マラリア患者でIL-27産生CD4+T細胞を検出していない点がある。原虫血症がかなり高くならないと、IL-27産生CD4細胞は出てこない可能性もあり、どのような調査を行えば検出の可能性を高めることができるか、今後の課題として残っている。フィールド研究の今後の進め方については、早い時期に明確な方向性を出したい。
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[Presentation] CD4+ T cell responses of school children in Mbita Kenya, endemic region of Plasmodium falciparum and Schistosoma mansoni,2016
Author(s)
Caroline Kijogi, Daisuke Kimura, Lam Quoc Bao, Risa Sonoda, Kazuhide Yahata, Osamu Kaneko, Shinjiro Hamano, Katsuyuki Yui,
Organizer
The 3rd International Symposium for the Promotion of Science and Technology Innovation
Place of Presentation
JICA研究所国際会議場(東京都・新宿区)
Year and Date
2016-07-13 – 2016-07-13
Int'l Joint Research
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