2016 Fiscal Year Annual Research Report
Research on the relationship between psm-mec mutations and MRSA virulence
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15H05279
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
垣内 力 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 准教授 (60420238)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | psm-mec / MRSA / 毒素 / SCCmec / 可動遺伝要素 |
Outline of Annual Research Achievements |
psm-mec遺伝子は可動遺伝要素SCCmec上に存在し、黄色ブドウ球菌の毒素産生を抑制する機能を有する。我々は以前に、日本で臨床分離されたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のうち、psm-mec遺伝子のプロモーター部位に変異を有する株(-7T>C型)、もしくはpsm-mec遺伝子を欠く株(欠失型)においては、野生型psm-mecを有する株に比べて細胞溶解毒素であるPSMの産生量が上昇していることを見出している。日本以外の地域に流行するMRSA株において、psm-mecの変異の有無と毒素産生量の関係性については明らかになっていない。本年度の研究において我々は、タイ王国で臨床分離されたMRSA株について、psm-mecの変異の有無と毒素産生の関連性について検討した。 MRSA 55株の中で、62%の株が野生型psm-mecを有し、18%の株が-7T>C型であり、13%の株が欠失型であった。野生型psm-mecを有する株に比べて、-7T>C型もしくは欠失型では、細胞溶解毒素PSMの産生量が増加し、羊赤血球に対する溶血活性が上昇していた。psm-mecの変異の有無とSCCmecタイプの対応関係、もしくはpsm-mecの変異の有無と染色体上にコードされるプロテインA遺伝子配列の対応関係は、タイ王国のMRSAと日本のMRSAの間で異なっていた。 以上の結果は、タイ王国において、psm-mec変異を有するMRSA株では毒素産生量が上昇していること、ならびに、psm-mecの変異はSCCmecのタイプや染色体の遺伝的背景に影響されずに毒素産生量の上昇を導くことを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はタイ王国から入手したMRSA株について解析を行った。タイ王国のMRSA株について、psm-mecの変異部位の同定、SCCmecのタイピング、プロテインAの遺伝子配列の決定を完了した。さらに、これらのMRSA株の毒素産生量の測定を行った。その結果、psm-mecの変異と毒素産生量の関係性、ならびに、psm-mecの変異とMRSA株の遺伝的背景の関係性について、情報を得ることができた。 以上の研究の進捗状況から、本研究がおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
タイ王国のMRSA株で新たに見出されたpsm-mec遺伝子変異がMRSAの表現型に影響を与えるかについて、遺伝的背景を等しくした条件で解析を行う予定である。さらに、タイ王国以外の国から、MRSA株を入手し、psm-mecと病原性との関係性について解析を行う予定である。
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Research Products
(3 results)