2017 Fiscal Year Annual Research Report
Research on the relationship between psm-mec mutations and MRSA virulence
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15H05279
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
垣内 力 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (60420238)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | psm-mec |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、海外に流行するMRSA株において、psm-mecの変異の有無と病原性の関係性を解明することである。昨年度までに、タイ王国の北部地域で臨床分離されたMRSA株について、psm-mec遺伝子が欠失または変異している株においては、溶血毒素の活性が上昇していることを見出している。本年度の研究においては、タイ王国の北部地域で分離されたMRSA株のpsm-mec遺伝子の変異の有無とバイオフィルム形成能との対応関係を検討した。さらに、タイ王国の南部地域から、新たにMRSA 47株を収集し、psm-mec遺伝子と毒素産生量の対応関係について検討を行った。 タイ王国の北部地域由来のMRSA株においては、野生型psm-mecを有する株に比べて、psm-mec欠失型では、バイオフィルム形成能が減少していた。一方、psm-mec変異型では、バイオフィルム形成能の減少は認められなかった。この結果は、psm-mecの欠失がバイオフィルム形成能を低下させること、psm-mecの変異はバイオフィルム形成能の低下には十分ではないことを示唆している。 タイ王国の南部地域から新たに分離されたMRSA 47株のpsm-mec遺伝子領域の配列を決定したところ、6%が野生型psm-mecを有する一方、17%が変異型psm-mecを有し、77%ではpsm-mecが欠失していることが判明した。これらのMRSA株の溶血活性を測定したところ、変異型psm-mecは野生型psm-mecを有する株に比べて溶血毒素の活性が上昇していた。一方、psm-mecが欠失している株においては、溶血活性の上昇は認められなかった。以上の結果は、変異型psm-mecと溶血活性の対応関係はタイ王国の北部地域と南部地域に共通しているが、psm-mecの欠失と溶血活性の対応関係は北部地域と南部地域で共通していないことを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、タイ王国の北部地域と南部地域から、MRSA 102株の収集を完了し、それらのpsm-mec遺伝子の変異の有無の決定と毒素産生量の測定を完了している。その結果、psm-mecの変異型(プロモーター領域の変異)は、いずれの地域においても毒素産生量の増加と関係性があるという結果を得られた。一方、南部地域由来株においては、psm-mecの欠失型は毒素産生量の増加と相関しないことが判明した。本知見は、psm-mecの変異のタイプと毒素産生の関係性を把握するための重要な知見である。
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Strategy for Future Research Activity |
タイ王国の南部地域で分離されたMRSAにおいて、psm-mecの欠失型が毒素産生量の増加を導かない原因について、以下の検討を行う。 (1) psm-mec遺伝子が含まれる可動遺伝要素SCCmecについてタイプ分けを行い、欠失型psm-mecが毒素産生量の増加を導かないSCCmecタイプが存在するか検討する。 (2) 毒素産生の促進に関わる制御遺伝子群(agr, sarA, saeRS)に変異があるか検討を行い、欠失型psm-mecが毒素産生量の増加を導かないことを説明する遺伝要素の同定を試みる。 さらに、ブラジル連邦共和国から新たにMRSA株を収集し、psm-mecの変異の有無と毒素産生量との関係性を検討する。
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