2015 Fiscal Year Annual Research Report
カンボジアでの包括的継続ケア研究:母子保健・感染症対策継続ケアモデル構築と評価
Project/Area Number |
15H05284
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安岡 潤子 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (90451773)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
名西 恵子 (大塚恵子) 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (40570304)
菊地 君与 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任助教 (40644737)
柴沼 晃 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (90647992)
神馬 征峰 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (70196674)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ベースライン調査 / インタビュー / GIS / オリエンテーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、母子保健指標が低迷し、他地域に比べ高いマラリア罹患率に苦しむ、カンボジア・ベトナム・ラオス国境地域にあるラタナキリ州に居住する母子を対象とした、包括的継続ケア(母子保健継続ケアとマラリア対策との融合)の実現と評価を目的としている。研究初年度である平成27年度には、当初の予定通り、共同研究機関との研究計画詳細決定、倫理審査諸手続き、現地医療従事者を対象とした包括的継続ケアについてのオリエンテーション、研究実施地でのベースライン調査2種を実施した。また、各国における過去の事例から、母子保健とマラリアの保健サービスを統合して提供することが、現地の母子の健康指標に与える影響を評価するため、システマティックレビューの準備を行い、PROSPEROにレビュー要旨を登録した。 ベースライン調査では、62村に居住する2歳未満児の母親387人を対象として、質問票を用いたインタビュー調査を実施し、各世帯の社会経済的要因、産前健診・出産・産後健診を主とする母子保健サービスの利用状況、母子保健サービスへのアクセスを困難としている地理的・社会経済的・身体的・精神的障害、母子のマラリア罹患・受療行動・予防行動、母乳育児・栄養等、母子の健康についてのデータを入手した。これまでにデータ入力を完了し、現在データ分析を進めている。更に、GPSを用いた環境調査を実施し、各村から最寄りの保健センター(母子保健サービス)までのルートデータを取得した。現在、地理情報システム(GIS)を用いて、保健センターへの地理的アクセスの現状について分析を進めている。 平成28年度には、ベースライン調査の結果を投稿論文にまとめるとともに、結果を活用して現地の母子保健及びマラリア対策向上を目指す介入プログラムを作成・開始する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、平成27年度には、共同研究機関との研究計画詳細決定、倫理審査諸手続き、現地医療従事者対象のオリエンテーション、研究実施地でのベースライン調査2種を実施した。 [経過]平成27年4月~6月 研究計画詳細作成、システマティックレビューPROSPERO登録:平成27年7月 カンボジア保健省・国立マラリアセンター及び母子保健センターにおいて、研究計画詳細について議論・決定。研究デザイン及びタイムラインについても合意が得られた。:平成27年7月~9月 倫理審査書類及びベースライン調査のための質問票作成・提出:平成27年10月 カンボジア保健省倫理審査完了:平成27年11月 東京大学での倫理審査完了:平成27年12月 研究実施地で医療従事者のオリエンテーション及び62村においてベースライン調査2種を実施。:平成27年1月~3月 データ入力・データクリーニング [主な成果] 1)カンボジア保健省国立マラリアセンター及びラタナキリ州保健局母子保健課の医療従事者計22人を対象に、本研究が目指す母子対象の包括的継続ケアについてのオリエンテーションを実施した。 2)62村に居住する2歳未満児の母親387人を対象として、質問票を用いたインタビュー調査を実施した。既にデータ入力を完了し、現在データ分析を進めている。これまでの分析から、調査参加者の約70%が、様々な地理的・社会経済的・身体的・精神的障害のため、産前健診4回以上(WHO推奨)を受診できなかった等、研究実施地における母子保健サービスへのアクセスに関する多くの課題が明らかなった。更に、母子の健康状態についても多くの深刻な問題が明らかになった。 3)GPSを用いた環境調査を実施し、各村から最寄りの保健センター(母子保健サービス)までのルートデータを取得した。現在地理情報システム(GIS)を用いて分析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度には介入を開始する。初年度(平成27年度)実施のベースライン調査のデータ分析結果に基づき、介入計画を作成・実施する。ベースライン調査を実施した62村を介入群・対照群に分け、介入群においては研究参加者(妊婦)のリクルートを開始し、300人に達するまで継続する。介入群では、主に次のような介入を開始する。 1)包括的継続ケアオリエンテーションの実施:マラリア対策を組み込んだ包括的継続ケアの概念、重要性及び期待されるメリットに加え、ベースライン調査の結果示された継続ケアの阻害要因・促進要因及び改善のための提案について、医療従事者及び各村で今後介入実施を担うヴィレッジ・マラリア・ワーカーに周知する。更に、ヴィレッジ・マラリア・ワーカーに対しては、研究参加者(妊婦)を対象に実施する介入内容の詳細について、直接トレーニングを行う。 2)包括的継続ケアカード導入:介入群において、ヴィレッジ・マラリア・ワーカーがリクルートした妊婦を対象に、包括的継続ケアカードを直接配布する。カードには、継続ケアを構成する主な保健サービス(産前ケア、助産専門家による分娩、産後ケア)の利用状況を記録する欄を設ける。更に、マラリア検査受診の有無や、継続ケアの各時点で受けた教育内容(マラリア予防等)を記録する欄も用意する。 3)産前ケア受診時に、迅速診断キットを用いたマラリア検査を実施する。マラリア感染者には治療薬を処方する。 4)出産・母乳育児・感染症予防教育:産前ケア時には出産・合併症に関する教育、感染症予防教育、早期母乳教育を実施する。出産時には新生児ケア・早期授乳教育、産後ケア受診指導を、産後ケア時には受療行動教育、衛生・授乳・栄養指導を行う。
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