2016 Fiscal Year Annual Research Report
Bacteriological and immunological analysis for the regulatory factors of aggressive periodontitis in Morocco
Project/Area Number |
15H05297
|
Research Institution | Matsumoto Dental University |
Principal Investigator |
吉田 明弘 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (20364151)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮崎 秀夫 新潟大学, 医歯学系, 教授 (00157629)
宇田川 信之 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (70245801)
田口 明 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (70243582)
吉成 伸夫 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (20231699)
安細 敏弘 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (80244789)
岩崎 正則 九州歯科大学, 歯学部, 准教授 (80584614)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 侵襲性歯周炎 / A. actinomycetemcomitans / 菌叢解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
侵襲性歯周炎は思春期前後の若年者に発症し、歯周組織の破壊が急速であること、前歯および第一大臼歯に限局した骨吸収を示すことなどが明らかとなっている。本疾患の罹患者の歯周ポケットからグラム陰性桿菌A. actinomycetemcomitans、特にJP2クローンが多く単離され、同クローンの有無が強く関与することが明らかにされてきた。しかし、本疾患に特異的な唾液細菌叢の解析は行われておらず、その健常者との相違等については不明である。そこで、モロッコ王国Mohammed V大学の約900名について口腔内診査を行い、侵襲性歯周炎の検査を行った。検査と同時に同意者について唾液および血液サンプルを採取した。そのうち、患者60名、健常者60名より唾液を採取後、唾液中細菌16S rRNAをターゲットとしたDNAシーケンシングを行った。次にその塩基配列を基に唾液中細菌の菌叢解析を行った。唾液の菌叢解析の結果、患者-健常者間に有意に特異的な細菌属が認められた(p<0.05)。患者唾液にはFirmicutes, Bacillus, Streptoccocus,およびTreponemaなどスピロヘータといった菌群が有意に多く見られた。また、健常者唾液にはPorphyromonas, Lactobacillusといった慢性歯周炎およびう蝕に多く見られる細菌群が有意に多く認められた。以上の様に本疾患に特異的な菌群が明らかになった。その構成細菌種を基にクラスター分類を行ったところ、唾液の構成細菌による患者-健常者のクラスターは全く異なることが示唆された。さらに、機械学習の手法を用いて菌叢から個体が侵襲性歯周炎である可能性について解析した結果、82.8%の正確さで予測できた。このことから、誤りは健康である人を侵襲性歯周炎だと誤ったのみで、侵襲性歯周炎であるが健康だと判断した誤りはないという結果が得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
侵襲性歯周炎の発症年齢である大学生を対象として解析する目的で、モロッコ王国Mohammed V大学の約900名について口腔内診査を行い、侵襲性歯周炎の検査およびスクリーニングを行った。検査と同時に唾液および血液サンプルを採取した。平成28年度は唾液および血球を用いた解析を行った。まず、患者・健常者それぞれ60名の唾液から、唾液中細菌のゲノムDNAを精製後16S rRNAをターゲットとしたDNAシーケンシングを行い、その塩基配列を基に唾液中細菌の菌叢解析を行った。唾液の菌叢解析の結果、患者-健常者間に有意に特異的な細菌属が認められた(p<0.05)。患者唾液にはFirmicutes, Bacillus, Streptoccocus, Staphyrococcus, 等の菌群およびTreponemaなどスピロヘータが多く見られた。また、健常者唾液にはPorphyromonas, Lactobacillusといった慢性歯周炎およびう蝕に多く見られる細菌群が多く認められた。以上、患者と健常者のそれぞれに特異的に多く見られる菌群が明らかになった。また、患者および健常者の構成細菌種を基にクラスター分類を行った。その結果、唾液の構成細菌による患者-健常者のクラスターは全く異なることが示唆された。さらに、機械学習の手法を用いて、菌叢(Operation Taxonomy Unit, OTUとその出現頻度)から個体が侵襲性歯周炎である可能性について解析した結果、誤りは116サンプルのうち20となり、82.8%の正確さで予測できた。以上の結果から誤りであったのは健康である人を侵襲性歯周炎だと誤ったのみで、侵襲性歯周炎であるが、健康だと判断した誤りはないという結果が得られた。以上の様に、侵襲性歯周炎患者の唾液細菌叢について詳細な情報を得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
1. 侵襲性歯周炎発症における人種特異性の解析 今回我々が行ってきた唾液細菌叢の解析から、健常者と患者でその細菌構成が明確に分かれることが明らかとなった。現在、採血した血液サンプルからDNAを採取し、ミトコンドリアDNAについて次世代シーケンサーを用いてDループ領域をターゲットとしたDNAシーケンシングを行った。次にその塩基配列を基にミトコンドリアDNAを基にした人種のクラスター解析を行う。本研究から侵襲性歯周炎に罹患しやすいクラスターが同定できれば、本疾患の感受性と特定人種との関係が明らかになり、本疾患の病因の解明につながるものと考えられる。 2. 歯周局所を構成する細菌叢の解明 これまでの研究において、侵襲性歯周炎の病巣内の細菌叢解析は行われておらず、A. actinomycetemcomitans JP2クローンの検出率が高いと報告されているのみである。そこで、本疾患の病巣である歯周ポケットの歯肉溝滲出液から16S rRNAをターゲットとして次世代シーケンスによる塩基配列情報を基に、罹患ポケットと健常ポケット間の細菌叢解析を行う。それら細菌叢の違いを比較することにより、侵襲性歯周炎の病巣局所の細菌学的状態を把握する。
|
Research Products
(8 results)