2017 Fiscal Year Annual Research Report
光合成とメタン生成のリンケージ:機能特異分子補酵素F430分析という新手法の展開
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15H05332
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
金子 雅紀 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (80633239)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 補酵素F430 / メタン生成 / メタン生成菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
メタン(CH4)は強力な温室効果ガスであると同時に天然ガスの主成分であることから,詳細なメタンの生成・分解メカニズムを理解することは人類社会の持続的発展にとって重要な課題である。本研究では,申請者が開発した補酵素F430 の超高感度定量分析法を海洋表層水および海底堆積物試料に適用することで,海洋環境におけるメタンの動態を明らかにすることを目的とする。本目的が達成されれば,「海洋メタンパラドックス」や「光合成生態系と暗黒生態系のリンケー ジ問題」という海洋環境における炭素循環の謎を解き明かすことができる。 上記目的に対し、平成29-30年度の研究の目的は海洋表層および海底下におけるメタン生成補酵素F430の水平・鉛直分布の定量と海洋環境におけるメタン循環の総合的理解を行うことであった。 海洋表層については、平成26年度に海洋地球研究船「みらい」で採取した水深500mまでの表層海水試料を用いて、試料採取地点054および091におけるF430の深度分布を明らかにした。全ての試料から補酵素F430が検出され、その濃度は2-88 fmol/Lの範囲で分布し、再表層部に小さな極大が、水深170m以深で濃度の上昇がみられた。一方、溶存メタンの濃度およびその炭素同位体比については全ての測点8測点で分析を行った。濃度は1-4 nMで分布しており、水深約100mに極大が見られた。またメタンの炭素同位体比は-47.6から-18permilであり、深度とともに同位体比が高くなる傾向にあった。Stn054および091においてメタンと補酵素F430の分布の間に相関は確認されなかった。今後は測点を増やし、北緯47度線における太平洋の表層ー亜表層の補酵素F430の分布を明らかにしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は海洋表層試料から32試料、海洋堆積物から30試料分析し、予定通り順調に解析が進んでいる。来年度は引き続き、海洋表層および海底堆積物の解析を行い、国際誌に報告する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は引き続き海洋表層および海底堆積物の解析を行う。得られたデータは先行して行う培養実験や既に報告されている微生物学的知見や物理・地球化学データと合わせることによって,メタン生成菌およびメタン酸化菌の分布・活動および,それを支配する環境要因について総合的な理解を行う。
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Research Products
(2 results)