2017 Fiscal Year Annual Research Report
ガスハイドレート鉱床形成過程における生物地球化学的続成作用の解明
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15H05335
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
柳川 勝紀 北九州市立大学, 国際環境工学部, 准教授 (50599678)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 嫌気的メタン酸化 / 炭酸塩ノジュール / メタンハイドレート |
Outline of Annual Research Achievements |
ガスハイドレート胚胎海底堆積物中に存在するメタンは嫌気的メタン酸化アーキアによって分解されることが知られている.この過程でメタンは酸化され,その一部は炭酸塩鉱物として海底面に存在することになる.特に,凝集して沈殿したノジュールと呼ばれる構造物の内部では嫌気的メタン酸化アーキアのニッチが存続し,断続的にメタン分解に関与する可能性が近年示唆されている.今年度の実施研究では,隠岐諸島周辺の海底から取得された炭酸塩ノジュールを試料として,その内部に生息する微生物群集の遺伝学的,生理学的,生態学的特徴の解明を目指した. 試料から作成した薄片の観察より,ミクライトから構成され,一部からは有孔虫骨格や巣穴様構造が存在することが示された.さらに,ノジュール形成後のステージで続成によりセメントされた部分も認識された.カソードルミネッセンス法では,マンガン濃度が高いと推定される組織も示された.さらに,炭素同位体比分析からは炭素の起源がメタンに由来することが示された.これらのことは,浅部環境での嫌気的メタン酸化反応によって炭酸塩ノジュールが生成されたことを示唆していた.顕微鏡解析と分子生態学的解析により,ノジュール試料内部には近接堆積物とほぼ同等の微生物が存在するが,その組成は異なっていることが示された.特に嫌気的メタン酸化アーキアはノジュール内部では見られたものの,隣接の堆積物中では全く検出されなかった.この傾向は,嫌気的メタン酸化反応の鍵酵素遺伝子を対象としたリアルタイム定量PCR解析と分子系統解析でも支持された.本研究により,海底炭酸塩鉱物というこれまでに目を向けられていなかったメタンシンクは,海底堆積物よりも重要な働きをする可能性が示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
所属機関の変更に伴い,次世代シーケンサーを利用しやすくなり,研究の速度が上がった.一方でラジオアイソトープを用いた実験は実施できなかった.次年度は他機関を利用することでスムーズに実施される見込みである.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,メタン生成アーキアや嫌気的メタン酸化アーキアを対象とし深海底におけるメタン循環の詳細を探る予定である.特に,メタンフラックスの強弱に対応した微生物生態系に焦点を当てることで,ガスハイドレート胚胎域における微生物駆動炭素循環を明らかにする.また,最終年度となるため,これまでの研究成果をまとめ,メタンハイドレート鉱床の生物地球化学的続成過程について統合的な理解を図る.
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Research Products
(6 results)