2017 Fiscal Year Annual Research Report
下水資源の循環灌漑利用システム開発をめざした国際水質基準と健康影響シナリオの確立
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15H05339
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Research Institution | Kisarazu National College of Technology |
Principal Investigator |
大久保 努 木更津工業高等専門学校, 環境都市工学科, 准教授 (60581519)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 下水処理水の灌漑利用 / 水系感染リスク / 社会工学的評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
エジプト灌漑水のウイルス定量測定は,9ウイルスを対象に灌漑用水路4地点の3ヶ月毎の通年データとして180データが得られた。本取得データによる健康リスク評価は平成30年度に実施する。 汚水付着野菜の消費者に及ぼす健康リスクを評価するため,下水灌漑を想定し下水が野菜に付着した際の大腸菌の消長と保存温度の関係を明らかにするため,生食用野菜として想定されるレタスに大腸菌を接種し実験を行った。結果,冷蔵庫保存を想定した温度5℃条件では,初期濃度から増殖することなく減少傾向が得られたが,保存3日目においても初期濃度に対して1log減少程度の103 CFU/g-野菜の大腸菌残存が確認された。20℃,35℃,44.5℃条件においては培養3日目まで濃度が上昇する傾向が確認された。得られた大腸菌濃度を国連食糧農業機関(FAO)が提供する各国の種別野菜摂取量データより,エジプト国民のレタス摂取を想定した汚染野菜摂取時の感染リスクを算定したところ,レタス未洗浄では10-2/年という年間許容リスク10-4/年を超える高いリスクとなった。感染性のある大腸菌を加味していないため過大な計算値とはなるが,リスクを評価する上で意義あるデータが示された。 下水処システム設置による指標細菌およびウイルスの低減効果についても調査を続けており、これまでに嫌気処理と好気処理を組合せたUASB+DHSシステムの処理水に膜分離活性汚泥法を組合せたシステムが,消費電力量とノロウイルス除去性能の両面を加味した上で最適なシステムとして考えられた。引き続き消毒手法の組合せ等を加味したシステムについて継続課題とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで日本,インド,エジプトで稼働中の下水処理システムを対象に,流入下水,中間処理水,最終処理水等の大腸菌とノロウイルス(GI)濃度より,各国の降雨量や栽培作物種の違いを想定した正味の栽培に必要な灌漑水量を算出し,独自に作成した栽培暦を元に農業従事者に対する健康リスクを評価してきた。更に現在は,ノロウイルス(GI)の他に8種類のウイルス(アデノウイルス,アイチウイルス,エンテロウイルス,A型肝炎ウイルス,E型肝炎ウイルス,ノロウイルスGII,ノロウイルスGIV,ロタウイルス)を加えた測定に対象を増やしており,より幅広いウイルスの評価を行っている。また,平成29年度には,エジプトで実際に利用されている灌漑用水路(Dishody drain)を対象に,3ヶ月毎の通年のウイルスデータが得られるなど,着実にデータを積み重ねている。 これらに加え,汚水付着野菜を消費者が生食摂取したケースを想定し,健康リスクを評価するなど,これまでの農業従事者のみならず消費者に対するリスクを評価するなど,これまでの実験計画に加えて新たな補足データも蓄積されており,汚水灌漑を取り巻く現状に対して幅広い評価が進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は,エジプト灌漑用水路のウイルスデータ(180データ)を元に,これまでのノロウイルスGIによる健康リスク評価に加え,他のウイルス種や年間の濃度変動より農業従事者に対する包括的な健康リスクを評価する。また,平成29年度から継続して,途上国の実情を反映した安全を担保した下水再生水の農業利用を目指し,下水処理システムの設置によるウイルス低減効果を評価し,下水処理システムの電力消費量等を考慮した,現地に適用可能な下水処理システムを評価・提案する。平成28年度より連続運転しているラボスケール下水処理装置については,インド等で多量に使用されている界面活性剤による処理性能への影響を評価する実験を追加で実施する。
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[Presentation] Evaluation of disability-adjusted life year and microbial risk for farmers using agricultural drainage water for irrigation in the West Nile Delta2017
Author(s)
Tsutomu Okubo, Akinori Iguchi, Shuya Tanaka, Shota Uchida, Tadashi Tagawa, Mamoru Oshiki, Nobuo Araki, Ahamed Tawfik, Masanobu Takahashi, Kengo Kubota, Hideki Harada, Shigeki Uemura
Organizer
7th IWA-ASPIRE, Kuala Lumpur, Malaysia
Int'l Joint Research
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[Presentation] Prokaryotic diversity in a practical-scale DHS reactor treating municipal wastewater using next-generation sequencing analysis2017
Author(s)
Akinori Iguchi, Mayumi HAYASHI, Toru SHIGEMATSU, Hiroyuki NAGAI, Tsutomu Okubo, Shigeki UEMURA, Takashi YAMAGUCHI, Kengo KUBOTA, Hideki HARADA
Organizer
7th IWA-ASPIRE, Kuala Lumpur, Malaysia
Int'l Joint Research
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