2015 Fiscal Year Annual Research Report
セントラルコマンドの中枢伝達経路の解明と心疾患における機能制御
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15H05367
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
木場 智史 鳥取大学, 医学部, 准教授 (40565743)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | セントラルコマンド / 自律神経 / 視床下部 / 延髄 / 中脳 |
Outline of Annual Research Achievements |
運動時に大脳皮質から生じる神経信号[=セントラルコマンド(CC)]が,どのような下降路を経由して交感神経系に出力するかは分かっていない.本研究は,分子細胞生物学の先端手法を活用する実験から,CC が生じる脳部位と交感神経をつなぐ中枢経路の解明を目指す.さらに,その中枢経路を選択的に機能制御することで,心不全において過剰である運動時交感神経反応が改善できることを示す. 2015年度には,神経トレースと免疫染色とを組み合わせる実験から,随意運動時に活性化して循環中枢に入力する部位を探索した.この実験から,ラット延髄の昇圧部位(RVLM)には視床下部室傍核や中脳中心灰白質からの投射があり,その投射神経の一部は随意運動によって活性化することが分かった.CCの中枢経路と考えられる.また視床下部室傍核に投射する視床下部内の領域も調査し,後部視床下部からの投射があることも分かった. 光遺伝学を活用したin vivo実験から,中枢経路の機能を調査する実験も進めた.チャネルロドプシンを発現させるためのアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)をラット視床下部室傍核に注入した.一ヶ月から一ヵ月半後,麻酔下のAAV注入ラットのRVLMに青色光を照射すると有意に動脈圧が上昇した.この結果から,視床下部室傍核からRVLMへの投射神経の選択的活性化は交感神経系を活性化させることが分かった.ただし,RVLM光刺激時の昇圧の程度は小さかったことから,光遺伝学手技の方法を改善させる必要性がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
神経トレースと免疫染色とを組み合わせる実験では当初の予定よりも進捗があった.一方で光遺伝学を活用したin vivo実験では予想よりも光受容タンパク質の発現効率がよくなかったため,十分な信頼性のあるデータを収集できたとは言えない.しかし他の研究者からの助言を得,この問題を改善させる目処がすでに立っている.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度には,神経トレースと免疫染色とを組み合わせる実験から,随意運動によって活性化する中枢経路の探索をさらに高次へと進める.また,ラット脳内における光受容タンパク質の発現効率を上げるとともに,覚醒ラットでの生体信号記録系と光遺伝学とを組み合わせる実験系を構築する.
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Research Products
(8 results)