2015 Fiscal Year Annual Research Report
健康寿命の延伸に寄与する骨格筋由来分泌因子の同定・機能解析とその応用
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15H05368
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
小野 悠介 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 助教 (60601119)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 骨格筋 / Notch / 健康寿命 |
Outline of Annual Research Achievements |
Notchは細胞膜貫通タンパク質受容体であり,細胞外からの刺激によって活性化された後,細胞内で様々な遺伝子発現を調整することにより,組織・臓器の発生,成長,再生を制御する。本研究は,骨格筋と健康寿命との関連を探るため,加齢にともない低下することが報告されているNotchシグナルに着目した。我々は,Notch2遺伝子が,筋幹細胞であるサテライト細胞のみならず,最終分化を遂げた筋線維に発現することを見出した。そこで筋線維特異的かつ恒常的にNotchシグナルを活性化させるため,ドキシサイクリン依存的かつ筋線維特異的にCreリコンビナーゼを発現制御できるHSA-rtTA/TRE-Creマウスに,ROSA26プロモーター下にstopコドンをloxP配列で挟み,その下流に活性型Notch2 (N2ICD) 遺伝子を挿入したマウス (R26-N2ICD) を掛け合わせて、HSA-rtTA/TRE-Cre;R26-N2ICDマウスを作出した。生後6週令のHAS-rtTA/TRE-Cre;R26-N2ICDマウスにドキシサイクリンを3週間飲水投与させ,筋線維特異的にN2ICDの過剰発現 (N2ICD-mTG)を誘導した。N2ICD-mTGマウスの骨格筋において,Notch2およびその標的遺伝子の発現が顕著に増加していることを定量PCRにより確認した。N2ICD-mTGマウスの前脛骨筋を単離後,筋横断切片を作成し,免疫組織化学解析をおこなった。その結果,筋線維タイプが速筋型から遅筋型にシフトしていることがわかった。DNAマイクロアレイにより網羅的遺伝子発現解析を行ったところ, N2ICD-mTgマウスの骨格筋において,TGFβファミリーに属するgrowth differentiation factor 11 (GDF11)の遺伝子発現が,80倍以上増加していることを見出した。この増加は定量PCRによっても確認した。GDF11は健康寿命との関連が近年報告されているため,次年度は,筋特異的N2ICD発現が健康寿命に与える影響について検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝子改変マウスの健康寿命の評価については進行中である。予定より早く健康寿命に関連する可能性のある生理活性因子をいくつか同定できた。
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Strategy for Future Research Activity |
N2ICD-mTgマウスの骨格筋において,健康寿命との関連が報告されているGDF11が増加していることを見出した。次年度は,筋線維特異的N2ICD過剰発現マウスの健康寿命を評価する予定である。並行して解析している他の遺伝子改変マウスにおいても健康寿命の評価および候補となるマイオカインの同定を試みる。
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