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2017 Fiscal Year Annual Research Report

コンテンポラリーダンスにおける「デモクラシー」の系譜学

Research Project

Project/Area Number 15H05377
Research InstitutionWaseda University

Principal Investigator

越智 雄磨  早稲田大学, 坪内博士記念演劇博物館, その他(招聘研究員) (80732552)

Project Period (FY) 2015-04-01 – 2019-03-31
Keywordsジェローム・ベル / デモクラシーの身体 / コンテンポラリーダンス / フェスティヴァル・ドートンヌ / ソーシャル・エンゲイジメント / ダンス
Outline of Annual Research Achievements

本研究は、現代ダンスにおける「民主主義的なるもの」ないし「デモクラシーの身体」と呼ばれる一つの理想的理念の追求の歴史を探るものである。「デモクラシーの身体」は、舞踊史家のサリー・ベインズが1960年代のアメリカで起こったポストモダンダンスに見出した理念であり方法であるが、1990年代のフランスのコンテンポラリーダンスにおいて、そのようなポストモダンダンスの思想や方法論の再評価が高まった歴史的背景に注目している。
そのような流れの中に位置付けられる振付家ジェローム・ベルは顕著な活動を見せている。2017年にフランス、パリで行われている最大級の舞台芸術フェスティヴァルであるフェスティヴァル・ドートンヌ・パリでジェローム・ベルの総特集「ポートレート・ジェローム・ベル」が組まれたことを受け、その機会にパリで発表されたジェローム・ベルのいくつかの作品を調査し、ジェローム・ベルへのインタビューを実施した。
ジェローム・ベルがこのフェスティバルの期間中に上演した『ガラ』は「デモクラシーの身体」という問題系を現代に引き継いだものだと考えられる。手法的には、ポストモダンダンスにおいて使用されていた「タスク」と呼ばれる振付方法が応用されている。「タスク」とは、特定のダンスのテクニックの習得を前提としない、言葉による指示に基づき、実行する行為をダンスとして枠付けて提示する方法であり、一般から募られた出演者にはダンスの素人も多く見られる。テクニックの面だけを見れば、フェスティバル・ドートンヌのようなパリのアートワールドの中枢で発表される作品には相応しくないと判断される可能性のある作品である。しかし、この作品は、アートワールドから最も隔たっていると考えられてきた移民や貧困層の住民が多く住むサン=ドゥニでのワークショップから生まれたものであり、一種のソーシャル・エンゲイジメントとして捉えられるものである。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

パリで最も重要な舞台芸術祭であるフェスティヴァル・ドートンヌ・パリで、本研究の対象である振付家であるジェローム・ベルの特集が組まれたことにより、ベルによる複数の作品を短期間に見ることができた。具体的には、リヨン・オペラ座バレエ団からの委嘱作品である『 Pose arabesque, temps liee; en arriere, marche, marche.』、『ガラ』、『Spectacle en moin』『ザ・ショー・マスト・ゴー・オン』(カンドゥーコ・ダンスカンパニーによる)である。またこの機会にジェローム・ベルに面会することによって、既存の出版物に収めれていない情報を得ることができたため、研究が順調に進展した。特に『ガラ』の創作に関しては、移民、貧困層が多く住み、テロや暴動の舞台ともなっているサン=ドゥニでのワークショップが要になっており、多様な民族や、多様な価値観を共存させるフランスの社会的課題が作品に取り込まれていることが判明した。この事実が判明したことで、1960年代のアメリカのポストモダンダンスとは異なるフランスの現代ダンスの特殊性と現代性を考察する手がかりを得ることができた。

Strategy for Future Research Activity

平成27年度に実施した政治的観点からの研究(文化政策が現代ダンスに与えた影響に関する考察)と平成28年に実施した美学的観点からの研究(ニコラ・ブリオーの「関係性の美学」やクレア・ビショップらの批判)を統合し、「デモクラシー」という用語を一つの観点としながら、1960年代のアメリカのポストモダンダンスから1990年代のフランスの「ノン・ダンス」を一つの系譜として捉え、舞踊史を更新することを目指したい。
とりわけ、平成29年度のジェローム・ベルの作品の鑑賞とベル本人に対する聞き取り調査により、フランスの社会的課題である多様性の共存と昨今の創作が結びついていることがわかったため、フランスの社会が孕む矛盾や分断を是正する機能や役割を現代ダンスがいかに担っているかという観点から、ジェローム・ベルらの作品を再評価したい。

  • Research Products

    (5 results)

All 2018 2017

All Journal Article (3 results) (of which Open Access: 1 results) Presentation (1 results) (of which Invited: 1 results) Funded Workshop (1 results)

  • [Journal Article] 数々の論争を巻き起こしたジェローム・ベルが見せる、失敗と奇跡2017

    • Author(s)
      越智雄磨
    • Journal Title

      CINRA.NET

      Volume: 2017年12月20日 Pages: webのためなし

    • Open Access
  • [Journal Article] ジェローム・ベル『ガラ』ー喜びにあふれた多様性が共同体を成立させる2017

    • Author(s)
      越智雄磨
    • Journal Title

      埼玉アーツシアター通信

      Volume: 72 Pages: 6-7

  • [Journal Article] 「失敗」と「成功」の境界が揺らぐーアマチュアたちが出現させる奇跡の舞台2017

    • Author(s)
      越智雄磨
    • Journal Title

      Intoxicate

      Volume: 12/10発行号 Pages: 6

  • [Presentation] トリオAの経年変化 ―終焉したダンス、あるいは終焉しなかったダンスについて―2017

    • Author(s)
      越智雄磨
    • Organizer
      イヴォンヌ・レイナーを巡るパフォーマティヴ・エクシビジョン
    • Invited
  • [Funded Workshop] 舞踏再考ー記憶の接続と切断2018

URL: 

Published: 2018-12-17  

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