2017 Fiscal Year Annual Research Report
染織技術の伝承に関する研究-材料・道具に焦点をあてて-
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15H05379
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Research Institution | Independent Administrative Institution National Institutes for Cultural Heritage Tokyo National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
菊池 理予 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 無形文化遺産部, 主任研究員 (40439162)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 染織技術 / 技術伝播 / 無形文化財 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は染織品の様式変遷や模様の流行に関する従来の染織史研究を踏まえ、中世以降、日本各地に見られる染織技術がどのような伝播経路を辿りそれぞれの産地にもたらされたのか、そして産地に根付いた技法にはいかなる材料や道具が用いられてきたのか、工程はどのように分業され継承されていったのかに着目し研究を行うものである。本研究では特に染織技術をとりまく材料や道具に着目し、産地間の比較検討や交流の情報を整理することで、染織技術の伝承について検証する。さらに研究対象を現在にも受け継がれる技術を主な対象に据えることで、染織技術を後世に受け継ぐ最善の方策を提示することを目指す。本研究は、江戸時代の藩政資料及び地方史、鎌倉時代以降の染織技法書と染織技法が描かれた絵画資料の調査研究、それらの技術に対応する染織品や実物調査、さらに現地における染織技術調査を基盤として推進する。 本年度の主な成果は以下である。 1.日本における染織技法の分布(平成29年度版)の整理と実地調査 平成28年度に整理した染織技法の分布に平成29年度の指定情報・解除情報等の確認を行い更新した。また、実地調査では宮古島の苧麻栽培や糸績みの技術、友禅染の作家や職人に対して道具と材料に関する聞き取り調査を実施した。絹糸製作技術についても、岡谷蚕糸博物館の協力を得て9種の異なる道具による繰糸技術の映像記録作成を開始した。 2.中世以降の日本における染織技法の分布の整理 全都道府県史から染織関連項目の抽出が完了し、抽出した記述を内容ごとに分類した。主な分類項目は、特産品、日用品、工程、技術交流などである。来年度以降はこれらの情報を、当該地域によって担っていた職掌なども考慮しながら染織技術の伝播について引き続き検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までに都道府県史から染織関連項目の抽出が終わり、抽出情報を特産品、日用品、工程、技術交流などにおおまかに分類する作業まで完了した。網羅的な情報からは、地域史だけでは読み解けない「技術伝播」についても関連する項目が抽出できた。本年度は整理作業を進めながら公開できる状態まで、精査する予定である。 また、昨年度は当初より予定していた実地調査も行うことができたため、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である本年度は、昨年度までに抽出したデータをもとに、近代までの各地域における染織技術に関する基礎情報の整理を行う。また、可能な限り地域の博物館・資料館などに所蔵される染織技術関連道具との関わりについても考察する。 そのうえで、現在まで伝承してきた、無形文化財及び伝統工芸品に指定されている染織技術を中心に、それぞれの技術の特徴や地域性などについて考察を進める。 また、実地調査及び聞き取り調査を行った技術に関しては、関連資料と照合することで現在に伝承する技術について考察を進める。
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Research Products
(2 results)